『リアル鬼ごっこ』トリンドル玲奈&篠田麻里子&真野恵里菜 単独インタビュー
過酷な撮影から生まれた涙
取材・文:編集部・小松芙未 写真:平岩亨
女子高生役のトリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜が正体不明の何かに追われ続けたその先には……。園子温監督が完全オリジナル脚本で同名人気小説を映画化。ミツコ役のトリンドル、なぜかウエディングドレスに着替えさせられるケイコ役の篠田、陸上部・いづみ役の真野が制服姿で、真冬ならではの撮影の過酷さやお互いのこと、そして園監督から引き出された演技について語り合った。
見たことのない自分の姿に驚いて涙
Q:完成作を観て、トリンドルさんと篠田さんは涙を流されたそうですね。
トリンドル玲奈(以下、トリンドル):わたしはモニターを見ずに撮影をしていたので、完成した映画を観たときに初めてどんな映像になっているのかわかって、もう衝撃的で。初めて見る自分の姿ばっかりで、ビックリして涙があふれました。
Q:見たことのないトリンドルさんの姿って?
トリンドル:劇中、全部です。ああいう姿になったことはなかったので、自分でもビックリしました。
篠田麻里子(以下、篠田):わたしは、園監督の作品は演じる側も観る側もエネルギーやパワー、体力が必要な作品が多いと思っていて。今回、監督が描く世界を全部通して初めて観たときに、映画をそのまま体感しているようである意味どっと疲れて、感動の涙と疲れ果てた涙が出ましたね。
Q:真野さんはいかがでしたか?
真野恵里菜(以下、真野):今まで携わってきた作品の中で一番過酷な現場でした。寝ていても、夢の中で何かに追い掛けられて、走っていたり……。
トリンドル:うそー!
真野:1月の撮影で、寒い中を走るのは体に負担がかかるんです。常に健康でいなきゃいけないという心掛けが一番大きかったです。
Q:夢に見るほどの恐怖を表現するために工夫したことはありますか?
トリンドル:現場に行くと怖いので、自然とそういう表情になっていました。
Q:現場に行くと怖かったんですか?
トリンドル:怖かったです。
篠田:現場が? 園監督が?
一同:(爆笑)
トリンドル:演技をつくって行っても、監督が現場でいろいろと変えるんです。本番直前に監督が来て、耳元でひと言、ふた言言って、戻ってカメラの横にずっといる。それが切り替えのスイッチでした。
Q:真野さんは極寒の中、薄着の衣装も含めて本当に大変だっただろうなと。
トリンドル:一番寒い日だったんです。
Q:そうだったんですか?
真野:そうだったようです。
トリンドル:一番過酷な日です。
真野:でも、走らないと終わらないし、トラックの荷台に乗せたカメラとの距離を一定に保つために、絶対に食らいついていかなきゃいけなかったんです。台本上は終わっていてもカットがかからないので、ずっと無心で走っていました。
制服姿は申し訳ない!?
Q:女子高生という役についてはどう思いましたか?
篠田:わたしはどちらかというと、ウエディングドレスを着る花嫁の役なので、あんまり女子高生感はなかったですね。でも、実際に制服を着ると、申し訳ないなって(笑)。
真野:わたしは着られる限り学生の役はやっていきたいと思います。制服を着るとウキウキしますよね。懐かしくなるというか、戻りたいなーって思ったりもします。
篠田:うん。
Q:トリンドルさんも思いますか?
トリンドル:いや、大丈夫かもしれない(笑)。
Q:流血シーンではトリンドルさんが返り血を一番浴びていますが、撮影はどのように行われたんですか?
トリンドル:初めてだったんですが、あれだけの血を浴びたからこそ、この役に入っていけたので、あの量は必要だったんだなってあらためて思いました。
Q:何回も浴びていますもんね。
トリンドル:何回も。もうなんか普通でした。現場に行って血を浴びて、一回流して、着替えて。また血を浴びて、帰りは全部洗って帰るという日々でした。
篠田:わたしは浴びるというよりも出す方だったので(笑)、ある意味ワクワクしましたね。ホラーは苦手なんですけど、園監督の世界観の血のりとかは大好きで、やっぱり人間って血とか、赤い物を見ると、カッとなってしまうんだなって。
トリンドル:本能的にね。
篠田:そう。本能のまま動けたというか、あのリアル感が自分たちを動かしてくれたなって思います。
真野:わたし自身が血を浴びることはなかったんですが、その分、走っている役なので、汗として水をよく掛けられまして。
Q:一番寒い日に……。
真野:そこはちょっと大変でしたね(笑)。
園監督の愛情を感じて……
Q:世界的にも名の知れた園監督の作品に出演して、意識が変わったり、得たものはありますか?
トリンドル:カットがかからずにお芝居がすごく長くなると、本当の感情が出て。途中からいわゆるセリフではなくなり、こういう芝居の生まれ方もあるんだって、すごく勉強になりました。
篠田:わたしは演技の経験が浅いので、セリフや台本の次の流れにとらわれることが多かったんです。でも今回は考える間もなく自分が動き、そこから出るセリフや勢い、感情が流れを動かすお芝居のやり方で、すごく新鮮で。本能のままに動いていたので、映画を撮っていたという感覚はあまりなく、体験したような作品でした。
Q:“異色のキャスト”ともいわれていますが、この三人で主役ということをどのように感じていますか?
篠田:わたしはこの三人の名前を見たときにホッとしました。二人はすごくゆったりしたイメージがあったので。
Q:実際はどうでしたか?
篠田:トリンドルちゃんも真野ちゃんもイメージのままで安心できました。
トリンドル:同じく。
篠田:でもわたし、トリンドルちゃんにすごくしゃべりかけるから、うるさい人って思われているかも。
トリンドル:え、全然(笑)。大人だなって思っていました。
真野:わたしは自分が二人と並んでいるのがちょっと不思議っていうか。知名度でもまだまだ足りていないと思っているので、監督やキャスティングしてくださった方々に感謝しています。
Q:園監督のどういうところが、皆さんのこれまでのイメージにはないものを引き出していると思いますか?
トリンドル:あの目つきです。
篠田&真野:あはは(笑)!
トリンドル:あと、撮影に入っても無口な感じや、本番直前に何かを言ってきたりするところです。
篠田:わたしは、園監督が「考えるより、慣れろ」というやり方なので、動いているうちに自然に動けているなっていう感覚や感情表現が園監督ならではで、自分に対して発見することがたくさんありました。
Q:真野さんは園監督作品への出演経験が豊富ですよね。
真野:監督はキャスト一人一人のことを見て、それぞれに合った引き出し方を考えているんだろうなって。だから今回わたしは放置されて、そうした方がこの子はくると思われたのかもしれないし、トリンドルさんに始まる前に何かを言うのも、そうした方がいいと判断したんだと。あんまり表情には出さないけど、常に愛情を持ってくれていることは感じました。
Q:いいです、なんか先輩という感じで。
篠田:うん。
真野:全然そんなことないです(笑)。
篠田:やっぱ、園監督を知っていますよね。
トリンドル:知っている。
篠田:わたしは今回初めてだったから、ずっとビクビクしていました。
真野:わたしも初めてのときは怖かったです。いつ怒られるかっていう(笑)。
モデル、元アイドルというバックグラウンドを持つトリンドル、篠田、真野が、女優を見いだす力にたけた園監督の“マジック”に見事にかかり、観客を引き込む熱演を披露。切なさやノスタルジーを感じさせる全く新しい『リアル鬼ごっこ』誕生の裏にあった過酷な撮影を乗り越えた三人の姿は鑑賞後、頭から離れないはずだ。
映画『リアル鬼ごっこ』は7月11日より全国公開