第4回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2015年9月公開作品編
とまとさんの言うとおり!?
アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、9月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!
第1位:『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』 批評家満足度96%
第2位:『EDEN/エデン』 批評家満足度81%
第3位:『アントマン』 批評家満足度79%
第4位:『ヴィンセントが教えてくれたこと』 批評家満足度77%
第4位:『Dearダニー 君へのうた』 批評家満足度77%
(2015年8月21日時点)
『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』
2014年にサンダンス映画祭などで注目を浴びた新感覚の白黒アメリカ映画。イランを舞台に全編ペルシャ語でホラーラブストーリーが展開する。犯罪がはびこるある街で悪党を襲う孤独な“ヴァンパイア”の少女が、純真な青年に出会うことで心の中が変化するさまを淡々と追う。1960年代の初期フランスの犯罪クラシック映画を再現するように、スタイリッシュかつ妖艶で悲しげな雰囲気は、「フィルムノワール」というジャンルがしっくりくる。現代にそぐわないからこそ新しく感じる古びた映像とセンスの良い選曲、そして登場人物たちのファッションに目と耳が魅了され続け、飽きがこない。アーティストとしても活躍する新鋭女性監督アナ・リリー・アミールポアーの才能が凝縮された一本で、とんでもないものをまた作ってくれるのではないかと次回作への期待が膨らむ。
『EDEN/エデン』
ジャンルにこだわらないフリースタイルのサウンド「ガラージ」に夢中になった青年2人がDJコンビ「Cheers」として活動を始める。フランス・パリのナイトシーンで人気になった主人公ポールの、1990年代から20年間にわたる栄光と挫折が描かれている。女優として活躍してきた若手監督ミア・ハンセン=ラヴの長編4作目に当たる本作は、脚本を手掛ける彼女の実兄スヴェン・ハンセン=ラヴをモデルにした青春ストーリー。クラブミュージックの変動のほか、エレクトロミュージック界のスーパーデュオで本作に楽曲提供しているダフト・パンクが誕生するエピソードが交じり、音楽ファンやパーティー好きな人間ならば見逃せない映像が続いていく。しかし、身近な人間を描くというリアルさを追求しすぎたことが原因なのか、ストーリーの核心がぼんやりとした状態で進行してしまうことがもったいない。ドラッグや酒に溺れるダメ男を描く映画があふれる中で、監督なりの主張が欲しかった。
『アントマン』
マーベルの新しいヒーローは、刑務所上がりで職探しを行った結果、「身長1.5センチになるスーツを着こんで『アントマン』に変身する」職業を手に入れた元泥棒のスコット・ラング。最愛の娘に認められたいがために、人生の再起を懸けるスコットを演じるのは、アイドル系イケメン俳優からコメディー俳優に転身し、ブレイクしたポール・ラッド。彼の起用から、ポールを中心とした濃いコメディーの展開を期待するも、名優マイケル・ダグラスはじめ登場人物全員の存在感が強すぎて、サラっとした主人公描写になっていた点が消化不良。しかし、アリのヒーローという今までにないキャラクターの戦闘シーンは、独特な世界観を生み出し、大いに笑える演出になっている。マーベルお決まりの最後まで席を立てない意味深なフッテージ映像もファンは見逃せないはず。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』
口コミが口コミを呼び、全米で大ヒットした本作は、第72回ゴールデン・グローブ賞コメディー/ミュージカル部門作品賞にノミネート。さらに、ヴィンセント役のビル・マーレイも、同部門男優賞にノミネートされるなど演技が絶賛された。1匹の猫と暮らす孤独で偏屈なヴィンセントの隣の家に、12歳の少年オリバーとその母親が引っ越してくる。老人と少年の年の差凹凸コンビの友情に、笑いながらもホロっとさせられる。監督・脚本・プロデュースを担当したセオドア・メルフィの体験を基にした物語の深さや、ナオミ・ワッツのロシアなまりのぶっとんだストリッパー役、今が旬のコメディエンヌのメリッサ・マッカーシーによる一生懸命なシングルマザー役も魅力的。ビルが本作でアカデミー賞にノミネートされなかったのが不思議でならないほど、過去最高の演技を披露している。
『Dearダニー 君へのうた』
コメディーで名をはせた脚本家ダン・フォーゲルマンが監督デビューを果たした本作では、名優アル・パチーノが老いたロックスター役に挑戦。43年前にダニー・コリンズ(アル)宛てに送られていたジョン・レノンからの手紙をきっかけに、ダニーが人生について見つめ直す、実話を少しだけ基にしたヒューマンコメディー。アネット・ベニングとクリストファー・プラマーというアカデミー賞常連の大御所が脇を固めたことで、ストーリーに説得力が増して安心して観られる。何といっても、アルが演者たちと仲良く映画作りに徹していたのが目に見えてわかるほど、役者同士のバランスが素晴らしく、スクリーンに映る生き生きとした一人一人の表情を見てすがすがしい気持ちになれる映画だ。ダメ人間だが憎めない魅力的な主人公を演じながらも、役者全員の個性を引き出したアルの力量はお見事。
第1位:『Dearダニー 君へのうた』
第2位:『ヴィンセントが教えてくれたこと』
第3位:『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』
第4位:『アントマン』
第5位:『EDEN/エデン』
9月は、主人公が改心するさまに心が温まりハッピーな気分になれる、秋にぴったりな感動作品を上位に選んだ。『Dearダニー 君へのうた』はアル・パチーノのスターオーラのみならず、念入りな演出と脚本力に感服。『ヴィンセントが教えてくれたこと』はビル・マーレイを筆頭にトップクラスのコメディー俳優のアンサンブルに心が躍らずにはいられない。また、次回作でハリウッドの高予算映画に抜てきされた女性監督の『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』は、“古さ”を新しさに変えた彼女独特のアーティスティックな才能に脱帽させられる。『アントマン』『EDEN/エデン』は観客を喜ばせる要素はたっぷりあるものの、スタートが若干弱かったのが残念。
◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii
Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』
2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。
大の映画好きがきっかけで6年間ロサンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーター として活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載
【雑誌・広告】
2010年~ 光文社「美STORY」
2012年 小学館 「週刊ポスト」グラビア出演
2014年 ショップチャンネル 藤井まゆみプロデュース「BE GENE」
2014年~ 美サロ イメージキャラクター