『ヒロイン失格』桐谷美玲&山崎賢人&坂口健太郎 単独インタビュー
めちゃくちゃ笑える恋愛映画
取材・文:高山亜紀 写真: 吉岡希鼓斗
人気コミックが原作の『ヒロイン失格』で、とびきりはじけた演技を見せている桐谷美玲。原作ファンを公言しているだけあり、アグレッシブ過ぎる変顔や丸刈り頭もいとわず、主人公はとりを思いっきり楽しんで演じている。クールな利太にNHK連続テレビ小説「まれ」やドラマ「デスノート」など話題作に出演中の山崎賢人、モテ男の弘光にメンズ・ノンノ専属モデルの塩顔男子・坂口健太郎と、相手役には注目の二人がそろった。桐谷も「かっこいい」と絶賛する二人の美男っぷりにも注目だ。
二人のイケメンに桐谷、もん絶!
Q:原作のファンだったそうですが、役が決まったときの気持ちは?
桐谷美玲(以下、桐谷):「こんなに面白い漫画があるんだ!」という驚きがあって、単純に大好きだったんです。それで、「やりたい!」とずっと言っていたのですが、実現することになって、「じゃあ、やってください」といざ言われると、逆にすごいプレッシャーでした。「どうしよう」という思いも大きかったです。初号試写を観るまで、ずっと不安でしたが、出来上がったものを観て、ようやく安心しました。
Q:原作ファンの目から見て、利太と弘光はどうでしたか。
桐谷:もうどこからどう見ても利太で、弘光でした。しかも、動いて、しゃべっているから、より魅力が増している。試写室では隣で(原作者の)幸田もも子先生も観ていらしたのですが、すごく感動されていました。原作の良さはもちろん、映画ならではの魅力もたくさんあります。利太も弘光もかなりかっこいいです!
Q:少女漫画原作ならではのかっこよさを二人はどう意識して、演じていましたか。
山崎賢人(以下、山崎):「かっこいい」というのはわからないですが、利太は結構、思ったことを言うタイプ。真っすぐ突き進むところもあるけれど、ダメっぽさもある。そういうダメな部分はちょっと母性本能をくすぐるようにできたらいいなと思っていました。それから、利太は空や虫の写真を撮ったりして、ちょっとつかみどころがないんですよ。
Q:ふんわりしたところが、かわいかったです。普段の自分と近いですか。
山崎:普段の自分もなんとなく生きていますけどね。
桐谷・坂口健太郎(以下、坂口):普段、利太みたいだっけ? 全然、違うよね(笑)。
山崎:え、そうじゃない? 自分ではわからなくないんだけど(笑)。
坂口:弘光に対する原作ファンの方のイメージは軽い、チャラい印象が強かったと思うのですが、原作を読んだときに、僕にはそういうイメージがあまり湧かなかったんです。監督とも、「物腰が柔らかくて、女性の扱いがうまいだけで、あまり軽く見られ過ぎないようにしたい」と話していました。せりふだけ見ると、キザだったり、「学校一のモテ男」なので、かっこつけすぎてるところもあるんですが、かっこよくは見せたいけれど、あまり行き過ぎないようにと考えていました。
Q:何といっても、超絶イケメンですからね。
坂口:すごいですよね(笑)。僕自身、高校時代は丸刈りでこういうタイプではなかったし、僕の周りにも「あいつは学校一モテる」みたいな人はいなかったんです。なので、最終的に参考にしたのはやはり漫画の中の弘光ですね。
シリアスあり、コメディーあり、ラブもあり
Q:はとりの顔つきがくるくる変わって、本当にかわいかったですが、特にお気に入りの表情はありますか。
山崎:やっぱり、メンチ切ってるところでしょう?
桐谷:そうそう! 「弘光、やるしかねぇ!」って部屋でメンチ切って、言ってるところとその後、弘光に迫っていくところですね。
山崎:あれ、すごくいい。僕も好きです。かわいいし、面白いし。
桐谷:あの顔、全然、かわいくないですよね。変ですよ。あんな人、いないです。
坂口:あれも好きだな。はとりが携帯を落として、拾ってくれた人に「誰?」って突っ掛かるところ。むっちゃ、笑っちゃった。
Q:顔の作り方は研究したんですか。
山崎:あれ、どうやってやったの? 何となく? 練習したの?
桐谷:監督と「どういうのにしよう」って話し合った結果です。「ちょっと、顎を突き出しながら、揺れたらいいんだよ」って(笑)。
Q:ギャグ満載の作風ならではの苦労はありましたか。
桐谷:あまり大変と思わず、楽しんで撮影していました。監督もとにかく笑っていて、OKを言う前に笑いだしているときも何度もあって、それはうれしかったです。
坂口:僕は、はとりの一直線な、猪突(ちょとつ)猛進なところを優しく笑って見守っているような役どころだったから、そうコミカルな演技はなかったんです。でも、弘光はニコニコしながらも、言うことはバシッと言う。はとりにも、はとりのライバルの安達(我妻三輪子)さんにも、元カノの恵美(高橋メアリージュン)さんにも、ちょっときつめのせりふを言うので、そういうところのギャップは大切にしていました。「ただ笑っている調子のいい人ではないんだよ」というところをしっかり見せたかった。
山崎:はとりはかなりコメディー色が濃い感じになっていますけど、利太にはあまりそういうコミカルな要素はなかったんです。ただ、はとりに対する態度などは、どうしたらより面白くなるか、監督と何度も話し合いました。とはいっても、監督は面白さだけにこだわっていたわけではないんです。出来上がった作品を観たら、ちゃんとラブコメで、しっかり恋愛映画になっていました。
坂口:撮っているときはどんなふうにつながっていくかなんて、あまり考えていなかったんですが、映画を観たら、いろいろな要素が詰まっていました。竹内力さんがちょこちょこ走り回っていたり、突然、柳沢慎吾さんが出てきたり。シリアスもあり、コメディーもあり、もちろん、ラブもあります。
ずばり、利太派? 弘光派?
Q:桐谷さんの表情に二人がつい笑ってNGとか、なかったですか。
山崎:はとりが「うん、大丈夫」って王道ヒロインぽい、悲しそうな顔で利太の前から去っていくとき、振り向きざまにものすごい顔で走っていくんですが、利太からは見えていないんです。でも、後からモニターで見て、衝撃でした。
桐谷:顔じゃないんですが、丸刈りになったとき、二人とも、すごい反応してたよね。弘光くんと全く同じだった。「やっべ~」って。利太もそう。「何、これ? どうなってんの? 触っていいの?」ってすごい興味津々って感じでした。
山崎:あれが面白かったな。「優しいな、利太」って、はとりが利太にとんっと肘をぶつける場面があったんですけど、本番のときに、はとりが空振って、失敗しちゃったんですよ。
桐谷:素で笑っちゃってるんですけど、それが映っていましたね。
Q:弘光がはとりに迫る「壁ドン」のシーンがありましたが、山崎さんの評価はいかがでしたか。
坂口:現場中、僕も賢人に聞いたよね? 「どうやったらいいの?」って。お芝居では3回だったんですが、シーンでは計6回、やっているんですよ。
山崎:壁ドンを逆に面白くしているからね。音もすごかった。
桐谷:「本物がいるから、それを超えるには数で稼ぐしかない」って、監督がずっと言っていました。だから、ああなったんです。
山崎:いや、坂口くんのほうが俺よりずっと、壁ドンしてる回数、多いよ。いい壁ドンでした(笑)。
Q:もしご自身がはとりだとしたら、利太、弘光、どっち派ですか。
桐谷:かわいい感じが好きなら利太。引っ張っていってくれるお兄さんタイプが好きなら弘光。わたしはかわいい方が好きなので、利太かな。
山崎:僕もじゃあ、利太で。すごく人間らしいから。でも、はとりにお薦めなのは弘光かなぁ。う~ん……どっちか、わからないなぁ。
桐谷:だって、どっちもかっこいいんだもん。
坂口:燃え上がるのは利太じゃない?
桐谷:でも、幸せになれるのは弘光かもしれない。
坂口:弘光は何でも言うこと聞いてくれそうだからな。一緒にいて楽しいのは利太。落ち着くのは弘光なのかもしれない。
桐谷:観る年代によっても、利太派、弘光派、分かれると思うんです。本当にどっちにもキュンとするポイントがあるので、映画を観た後、皆さんもきっと「どっち派?」って話すと思いますよ。
「こんな顔、絶対にかわいくないですよ」と目の前で、変顔をしてみせる桐谷美玲。その飾り気のなさは、はとりのストレートさを彷彿(ほうふつ)させる。山崎は利太同様、母性本能くすぐり系。桐谷ともまるで姉弟のように仲がいい。一方、二人をお兄さんのような優しいまなざしで見守っている坂口は弘光にぴったり。あらためて、『ヒロイン失格』は三人それぞれの魅力が存分に詰まっている作品だと感じた。
桐谷美玲
ヘアメイク:今井貴子
スタイリスト:百々千晴
山崎賢人
ヘアメイク:永瀬多壱
スタイリスト:伊藤省吾
坂口健太郎
ヘアメイク:廣瀬瑠美
スタイリスト:石井大
映画『ヒロイン失格』は9月19日より全国公開