『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』太川陽介&蛭子能収&三船美佳 単独インタビュー
疲れている姿もリアル、嘘がないから9年続いた
取材・文:永野寿彦 写真:杉映貴子
テレビ東京系列の人気バラエティー番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」が映画化。シリーズ初の海外ロケ地となる台湾を舞台に、路線バスだけを使用し、出演者自身が行程を決め、3泊4日以内で台北から台湾最南端にあるガランピ灯台へ向かうという過酷な条件下での旅を描く。太川陽介と蛭子能収のレギュラーコンビとマドンナとして迎えられた三船美佳が、映画化までされることになった本作の魅力や、先読みできない旅の苦労を語った。
出演者も驚きの、まさかの映画化
Q:最初に映画化の話があった時、正直どう思われましたか?
太川陽介(以下、太川):最初に言ったのが「何考えてんの?」。その一言だけでした。ありえないでしょ、普通は(笑)。大それたことを考えたなあと思って。ドラマじゃないんですよ、旅行番組ですよ。成立するかどうかわからないじゃないですか。台本も何もないのに一発勝負で映画を作ると(笑)。よくそんな勇気あることやるなあと思いましたね。
蛭子能収(以下、蛭子):映画は好きでよく観るんですけど、好きなのはサスペンスとかスリラーで。ドキュメンタリー映画はあまり観ないんですよね。だから、お客が入るかなという心配はすごくありました。ちゃんと元が取れるのかどうか、そういうことを考えちゃいました。経営者になったつもりで(笑)。
Q:レギュラーのお二人もびっくりされたそんな映画版にマドンナとしてオファーされたお気持ちは?
三船美佳(以下、三船):まず、わたしで大丈夫ですか? って思っちゃいました。というのも、テレビシリーズが大好きでしたから。今まで出演されたマドンナさんからは「過酷だよ」と聞いていたんですが、どれくらい過酷なのか一度体験してみたいとも思いました。怖いもの見たさもあって(笑)。出産の時も、無痛分娩という方法もあったんですけど、産む時の痛みを感じたいと思ったんです。
太川:え? 今、出産の話?(笑)
三船:ええ、わたしにとってはそういう心構えだったので(笑)。出産前に、上沼恵美子さんに「出産ってどれくらい痛いんですか?」って聞いたら「鼻からすいかやで」って教えてくださって(笑)。1回やってみようと思って、1人目を出産したんです。それと似た感覚でしたね。
太川:「鼻からすいか」だった?
三船:「鼻からすいか」でした(笑)。
すべてがリアルな、ガチだからこその魅力
Q:9年も続いていて、映画になるくらいの人気番組ですが、その魅力はどういうところにあると思いますか?
太川:嘘がないからだと思います。テレビの嘘っていうのを全部排除して、今までは常識だった作り方を全くしていませんから。だから斬新だったんじゃないかと思いますね。今まで味わったことのないものを楽しんでもらえているんじゃないかな。
蛭子:ガチですから。着くか着かないかという流れの中で、着かなかった時も唐突に終わってしまう。それが真実っぽいじゃないですか。いや真実なんですけど(笑)。より真実味が増すというか。普通だったら、成功した時にしか番組は終わらないですよね。でもこの番組は失敗しても終わるし。そこがいいんじゃないかと思います。
三船:そうなんですよね。普通、旅番組と言ったら、盛り上がって盛り上がってドーンみたいなものが必ずあるはずなのに、あまりにもリアルだから。現地の人たちとのふれあいもリアルだし、一生懸命歩いているのもリアルだし、疲れている姿もリアル。出演している皆さんがホントの素の状態で(笑)。テレビだってことを忘れてませんか、大丈夫ですかとこっちが心配になるくらいの素が見られるところが魅力なんですよ。マドンナにも全然メイクさんが入っていないのも、同業者だからわかるし。
太川・蛭子:(笑)。
三船:こんなに前髪がペターってなっていたら、普通は絶対メイクさんが入るよなって(笑)。女優さんでもグチャグチャになっていて(笑)。自分の身なりとか気にしないくらいに、没頭している姿がある。見ちゃいけないものを見ちゃったって気持ちと、ホントの人間らしさや美しさが見られる気がします。
太川:メイクさんが入る隙もないんです。4日間ずーっとカメラが回っていますから。
4日間ずっと回しっぱなしの撮影体制
Q:どういう撮影スタイルなんですか?
太川:A班、B班の2班体制で。A班は僕たちと一緒にバスに乗っていく。B班は後ろから追い掛けたり、前に回って撮ったりとかしています。僕たちと一緒にいるカメラマンは、バスの中でもずーっと回しているんですよ。何も逃さないぞという感じで。
三船:今回の本編を観て、あれだけ回しているのによくすべての要素をここまで作品に入れられるなって驚いたんですよ、わたし。
太川:それは会話の3分の2は蛭子さんのギャンブルの話だから。ほとんど使えない(笑)。
蛭子:そんなにしてませんよ。見たままの景色を言っているだけで。競艇場とかあると行きたくなるだけで(笑)。絶対寄ってくれないんですよ。
太川:当たり前でしょ!(笑)
蛭子:たまにはこうさ、ちょっと遊び心を持って。ちょっと気を緩めてみようかっていうところもあればね、いいんですけど(笑)。
プレッシャーに押しつぶされそうなルート選び
Q:リーダーはルート選びだけでも大変ですからね。
太川:いつもそのプレッシャーにはつぶされそうです。必ず振り返ってますよ。あそこでこっちを選んだのは正解だったのか。あれしか選択肢がなかったから大丈夫、そう自分に言い聞かせて。それでもいろんなことが起こる。今回も高速に乗っちゃったじゃないですか。
三船:ちゃんと確認したはずなんですけどね。
太川:日本でも大変なのに、台湾は本当に大変でしたね。
蛭子:僕はそういうプレッシャーはなかったですね。ついていくだけですから。本編も観ましたけど、ついていってるだけで僕は何にもしてないなって(笑)。最後のところで転んだから、やっと見せ場が来たかと。
太川:蛭子さんのピークなのね、アレは(笑)。
三船:声が聞こえて振り返ったら、宙に浮いているんですよ。その後の転び方も絶対起き上がれない感じで。笑えなかった。
太川:僕は割と早めに笑っちゃった(笑)。
蛭子:ああいう時は笑ってくれた方が楽ですよね(笑)。
三船:ホントに仲が良いんですよ、二人は。だからすごく心強い。家族みたいに甘えるところは甘えさせてもらえるし、頼るところは頼らせていただけたし。そういう空気作りがうれしかったですね。
インタビュー前の撮影時から太川、蛭子、三船の爆笑トークが炸裂。蛭子が「今回のホテルは大丈夫だった」と何気なく話すと、太川から「嫌だって泣いてたじゃん!」とすかさず突っ込みが入る。しかし、すっかり忘れていた蛭子は「泣いた? そんなシーンありましたっけ?」と驚いたよう。そんな二人を見守るかのように「ホントに仲良いんだから」と三船。それはまるで本作の一場面を観ているかのような楽しさで、3泊4日で台湾を縦断する過酷なバス旅を一緒に戦い抜いてきた旅の仲間の絆の強さが垣間見えた。
(C) 2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会
『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』は2月13日より全国公開