『キング・オブ・エジプト』玉森裕太インタビュー
神と人間が共存する古代エジプトで、残虐な暴君セト(ジェラルド・バトラー)によって王座をめぐる戦いが勃発。王に君臨する鍵となる“神の眼”を探し出し、囚われた恋人を救い出すために盗賊の青年ベック(ブレントン・スウェイツ)が壮大な冒険の旅に出る。世界20カ国のオープニング興行収入ナンバーワンを記録したアクション・アドベンチャーで、主人公ベックの声を担当した人気アイドルグループKis-My-Ft2の玉森裕太が、声優に初挑戦した意気込みを語った。
アフレコで参考にしたのは『ファインディング・ニモ』
Q:作品を初めて観たときの印象は?
古代エジプトの神話と、現代の最先端のCG技術を駆使した映像が融合したアドベンチャーで、とても新鮮に感じられました。それに、神々がとてもカッコイイんです。そんな作品の吹き替えをやると聞いて、「何で僕なんだろう?」とハテナがいっぱい浮かびましたね(笑)。
Q:初挑戦の声優の仕事はどうでしたか?
やっぱり不安はありました。声の仕事は全く想像してなかったので、こんなことならもっと早く準備しておけばよかったと思いました。何か参考にしようと思って、『ファインディング・ニモ』を観たんですけど、選択を間違えましたね。普通に楽しんで観ちゃいましたから(笑)。だけど変に人の作品を見て、イメージを作ってしまうよりは良かったんじゃないかな。
Q:ベックはほぼ全編に出演する上に、アクションシーンも多いですよね。
アクションシーンでの声には苦労しました。息遣いとか、何かにぶつかったときのリアクションの声や、殴る前の力みとか。全部のシーンに一個ずつリアクションがあって、「ここは何秒」と決まっている。いつものお芝居の仕事では経験したことなかったので、すごく難しかったです。
裸足になって、気合いで挑んだ
Q:難しさをどうやって乗り切ったんですか?
とにかくベックになりきろうと思いました。アクションシーンは、自分も「うわぁー」と声を出しながら、体を動かしたり。よくレコーディングでも気合いを入れるときに裸足になったりするんですけど、今回も靴を脱いで挑みました。
Q:ベックを演じるブレントン・スウェイツの演技は参考にしましたか?
テンションが違うし、元のベックの声も自分とは全く違う。だから参考というか、意識はしなかったですね。むしろ吹き替えの監督からベックのイメージは、「『ONE PIECE』のルフィのように」と言われました。普段は明るくて、怖いもの知らずで、いろいろとやってしまう。それから、神であるホルス(ニコライ・コスター=ワルドー)と一緒に旅をするんですが、ひるまずにいつもの調子で話す。そんなキャラクター設定に沿って頑張りました。
Q:実際のアフレコの現場は、どんな感じでしたか?
現場では、シーンごとに区切ってやっていました。基本的には順番に撮っていますが、ずっと声が張るところが続いたら「そこは最後に回そう」と変えることはありました。最初に作品を観て、だいたいこんな感じだとわかってからアフレコに入るんです。初めてでしたけど、リハーサルもあるから意外とすんなり入れました。口の動きを見てやるというよりは、秒数を合わせてやっていました。合っていなければ、言い回しを早くしたり遅くしたり。そんなに口の動きを意識しなかったと思います。
吹き替えをやっていて汗をかいたシーンとは?
Q:吹き替えと芝居の違いを一番感じたところは何ですか?
芝居は声だけじゃなくて表情もあるから、自分の中の良いテンションでできるけれど、今回はそうじゃない。声だけというのは本当に難しかったです。たとえばボソボソとしゃべるシーンでも、きちんと声を張っているんです。普段の僕の声だと、吹き替えでは会話が成り立たない。声の張り方、出し方が全然違いますね。
Q:キャラクターはどう解釈して演じましたか?
ベックはお調子者ではあるんですけど、勇敢だし、愛する人のために危険を顧みない。恋人を思って、一途に頑張る気持ちが感じられるようにできたらと思ってやっていました。あと、恋人と一緒にいるときの気持ちも考えてやっていました。
Q:吹き替えをしながら、楽しかったシーンは?
好きなのは、ベックが神の眼を奪いに神殿に潜り込むシーンですね。神殿にはいろいろなトラップがあるので、行く前にどうやって乗り込むか予習するんです。でも、実際その神殿の中に入ると不安になって、「大丈夫だ、大丈夫だ」と自分を奮い立たせる。そこからスイッチを切り替えて、ノンストップでトラップの中を駆け抜けていくところは、観ているだけでもワクワクしたし、声の吹き替えをやっていても、すごく興奮して汗をかきました。自然と体も動いていたし(笑)。
古代エジプトでは、召使い的立場に就きたい!?
Q:もし自分がベックの立場だったら、こういう冒険はやってみたいですか?
冒険に憧れがないわけではないですけど、無理です(笑)。絶対に立ち向かえないですよ。大事な人を守るために命を張るというのは、理想としてありますけどね。
Q:古代エジプトに行けたら、何になりたいですか?
奴隷にはなりたくないですね。ちょっと地位が上の人になれればいいかなと。今回なら召使い的な立場かな。神や王だとやる事が多くて大変。近くにいる立場の方が一番おいしいんじゃないかなと(笑)。
Q:今回の仕事について、メンバーから何か言われましたか?
誰にも言ってなかったんですが、仕事場にこの映画のパンフレットが置いてあったときに、メンバーの宮田(俊哉)が見て、超食いついてきました(笑)。「あ、この声優さん、あの作品の人だ! あ、この人も!」とか。めっちゃテンションが高くて、「豪華な声優さんたちだね」って完全にロックオンしていました。
取材後記
声優に挑戦する俳優、タレントが増えている中、実写版に加え、アクションシーン満載という、初チャレンジにしてはちょっと高めのハードルを乗り越えなくてはならなかった玉森。だが、「声の出し方、張り方、リアクションの声など、今まで気づかなかった細かいことを学びました。きっと、今後の舞台などに役立つだろうな」と振り返る。1つ1つを大事にして、理想に近づいていきたいと語る玉森の通過点となる作品と出会えたようだ。(取材・文:前田かおり)
映画『キング・オブ・エジプト』は9月9日よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開
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