SNSの光と闇…新時代のコミュニケーション映画
今週のクローズアップ
TwitterにInstagram、Facebook……もはや現代人の生活に欠かせないコミュニケーションツールとなったソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)。時代を映す鏡でもある映画には、これまで数多くの科学技術の進歩が記録されてきました。2010年にはFacebook誕生の軌跡を追った『ソーシャル・ネットワーク』が賞レースを席巻するなど、SNSの普及ももちろん映画に反映され、次第にSNSが登場するのは当然なことになりました。今回は、近年テーマとしてたびたび扱われるようになったSNSをベースにした映画をご紹介します!(編集部・吉田唯)
Facebookはここから始まった!『ソーシャル・ネットワーク』
SNS映画として現状最も有名なのは、Facebook誕生の裏側に迫った本作でしょう。第83回アカデミー賞で脚色賞、編集賞、作曲賞を受賞するなど数え切れないほどの賞を獲得し、Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグの出世作としても知られる一本です(ジェシーの早口セリフがすごいことでも有名)。
そもそも、Facebookが生まれたきっかけとは何だったのか。友達は今何をしているの? 気になるあの子に彼氏はいるの? といった疑問まで、個人ページを見ればその人のことがまるわかりになるFacebook。利用者が増加していく過程で、そうした人間のさまざまな欲求が映し出されるのも興味深いところです。ザッカーバーグが本当に求めていたものが明らかになるほろ苦いラストシーンは、いつの世も変わらない人間の性(さが)を浮き彫りにした秀逸な場面で、多くのSNS利用者の心を代弁しています。
あなたは誰タイプ?就活×SNSで人間の闇をあぶり出す!『何者』
『桐島、部活やめるってよ』の原作者・朝井リョウの直木賞受賞作を映画化し、就職活動を通して自分と向き合っていく5人の大学生を描いた「超観察エンターテインメント」。悲しいかな、仲の良い友達が急にライバルにもなるのが就職活動というもの。本作は、そこにSNSを絡めることで、本音と建て前が渦巻くリアルな人間関係の闇をあぶり出しています。SNSにアップされた仲間内の思い出写真とそれに対する感動的なコメント、意識高い系の投稿など、他人の投稿を「うわぁ……」とどこか冷めた目で見てしまう……。そんな感情に心当たりはありませんか? 当てはまる! と思った人は本作の結末にグリッグリッに心をえぐられてしまうはずです。
佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生という豪華キャストが演じる個性的なキャラクターも魅力の一つなのですが、彼らの行動には思わず「い、痛たたたた……」と胸を押さえてしまうような痛々しさが満載。どのキャラクターに感情移入するかでかなり見え方が違ってくる一本でもあるので、自分が誰タイプかという話題でも盛り上がるかもしれません。
画面の向こうに思いもしない危険が…『ディス/コネクト』
本作はコミュニケーションをテーマに、SNSを絡めながら大切な人との向き合い方を見直す人々の姿を追った群像劇。特に印象的なのは、SNSを通じていじめに遭い自殺をはかる少年とその家族、そして加害者のエピソードです。直接顔を見られないことを利用して少年をハメていく加害者が引き起こす事件とその結末からは、ネットいじめや(本作には登場しないものの)リベンジポルノなど、SNSが普及したことでより複雑&身近になってしまった問題点の数々が浮かび上がってきます。どのエピソードでも特徴的なのは、現実世界から逸脱した場所につながりや癒やしを求めた結果、事件が起こってしまうということ。そして、登場人物たちはその事件によってより一層悪化した現実に立ち向かわなければならなくなります。そんなとき、力になってくれるのはうんざりしていたはずの身近な人々。機械の中にある世界で他人と接触することが簡単になった現在、身近だからこそないがしろにしがちな「生身で関わりあえる人」の貴重さに気付かされます。
SNSは幸せだって生み出せる『ハッピーログイン』
「なんだかSNS映画って暗い作品ばっかり……」と思っているアナタ! そんなことはありませんよ! 正しい使い方をすれば、SNSは人生を豊かにするツールにだってなります。本作は仕事や恋に悩む6人の男女が運命の相手を見つけるさまを描いたラブストーリーで、題名の通り観終わった後“ハッピー”な気持ちになれるはず。
随所に“SNSあるある”がちりばめられていて、彼女に振られ、失恋の悲しみをSNSにつづった男性を心配して友達が訪ねて来るシーンの「大丈夫?」という問いかけに対する「案外悲しくない 悲しいのはその投稿に“いいね”を押されることだ」という答えには、多くの人が思わずうなずいてしまうのでは。さらに、思いを寄せる相手に友達申請をするか悩んだり、プロフィール写真を出来の良いものにして気になる相手とつながろうと奮闘したり、SNSのおかげで誕生日に気付いたり、探している人や物を見つけられたり……SNSを上手に活用しながら人生を幸せなものにするため奮闘する登場人物たちの姿に元気をもらえる一本です。
SNS発の革命!『#シカゴガール: ソーシャルネットワークが起こした奇跡』
シカゴ郊外に住む19歳の少女が、紛争が続くシリアの人々をSNSを活用してまとめ、現地の情報を世界に発信していく姿を追ったドキュメンタリー。「パソコンで革命を進めています」と語る彼女は、アメリカにいながらSNSを通して現地のデモを組織。現地から届いた情報を英語に訳し、動画などをアップしているサイトはメディアがニュースのソースとして使用するなど、世界にシリアの悲惨な現状を伝える発信源になっています。2010年12月にはチュニジアで大規模なデモが起こり、その様子を映した動画の拡散をきっかけに、報道やデモがますます過熱して20年以上続いた政権が28日で崩壊しました。このチュニジアの事例のように、市民がSNSで発信した情報が国の歴史を変える時代が到来しているのです。だからこそ、SNSを使いこなす人は時に脅威にもなり、政府に拷問でSNSのパスワードをはかされ、そこからデモを組織しているのは誰なのかすべて知られてしまう危険も。そんな命の危機と向き合いながらも、SNS発の革命を進める勇敢な人々の姿からは、SNSの新たな可能性と希望に気付かされるでしょう。