『土竜の唄 香港狂騒曲』本田翼&菜々緒&仲里依紗 単独インタビュー
男の下心は、女には見え見え!
取材・文:永野寿彦 写真:杉映貴子
高橋のぼるのコミックを、主演・生田斗真、監督・三池崇史、脚本・宮藤官九郎のタッグで映画化した大ヒット作の第二弾『土竜の唄 香港狂騒曲』。ヤクザ組織撲滅のために潜入捜査する主人公・菊川玲二の新たな活躍を描く。そんな玲二の心を、いろいろな意味で翻弄(ほんろう)することになる3人の女性を演じる本田翼、菜々緒、仲里依紗が本作の魅力、そして女性から見た男たちの世界について語った。
女性には未知の男の世界
Q:完成した作品をご覧になった感想を教えてください。
本田翼(以下、本田):まず純粋に笑えましたし、その上ハラハラドキドキして、ちょっとセクシーなシーンもあったりして。1作目よりもいろいろなものがパワーアップしているなという印象を受けました。
仲里依紗(以下、仲):エンターテインメント中のエンターテインメント。ジェットコースターのように、最初から最後まで息継ぎできないような印象でした。難しいことを考えずに楽しめますから、年末の忙しい時期にはピッタリな作品だと思います。
菜々緒:わたしは、全体的には楽しかったですけど、まだ自分のことが気になってしまって。
仲:そうなんですか?
菜々緒:1作目はまるで全員がラスボスみたいな存在だったじゃないですか(笑)。新しいキャラクターとして登場する身としては、どうすればいいのかと思っていて。
本田:それ、わかります。わたしも前作に登場していた暴力団のドン・轟周宝の娘、轟迦蓮という役なので、どうしようかと思いました。
菜々緒:ですよね。シリーズを楽しんでくださる方に「こんなキャラクター、いたよね」と思ってもらえる人物にしなければならないと思って挑みました。
Q:本作は熱い戦いを繰り広げている男たちの世界を描いた物語ですが、女性から見てどう感じていますか?
本田:すぐ拳で語るというイメージですね。この映画も実際にアクションが多いし、すぐ戦うし……(笑)。まず話し合った方がいいんじゃないのって思いました。言葉より先に体が動いてしまうのが男性の世界なんですかね。
菜々緒:そこには女性とは違う、潔さみたいなものや力で勝ち負けを決めるといったものがあるんでしょうけど。改めて考えると男の世界って未知ですよね。
仲:わたしは男の子を育てているから、すごく身近に違いを感じますね。すぐパンチをしてきたりするし、わからないことがすごく多くて、本当にホルモンが違うんだなって思います。だからわからないことは、女子はわからないままでいいんだって思いました。
バレバレの男の心理
Q:本作では主人公・菊川玲二を通して男性の心の本音みたいなものも描かれていますよね。
菜々緒:あれはすごくリアルだなと思いました。声は後から録っているはずなのに、演じる生田さんの表情とすごくマッチしていて、ホントにこんなことを思っていそうだなと(笑)。もちろん玲二のキャラクターだからこそというのはあるんでしょうけど、それでも少なからずああいう感じなのかなって。
仲:ホントにそうですよね。男の人って普通におっぱいとか見るし(笑)。絶対見ますよね。
本田:あれはなんでしょうね、つい目で追っちゃうのかな? 下を見るフリをして見たりする仕草も、すぐわかっちゃいますよね(笑)。
菜々緒:絶対にバレないようにはしているんだけど、アンテナが全部こっちに向かっているのが感じられるんですよね(笑)。
Q:玲二の気持ちはバレバレなんですね。
本田:バレバレですね。
菜々緒:迦蓮さんはそんな玲二の心の内をわかった上で、罵るシーンもあるんですよね。
本田:ああいうヤンキーのようなセリフは言ったことがなかったですし、生田さんの顔を蹴らなきゃいけなかったりしたので大変でしたね。しかも撮影初日だったので。でも生田さんが「本気でやっていいよ」と言ってくださったので、思い切りやらせていただきました。
菜々緒:わたしが演じた胡蜂(フーフォン)も、生田さんを蹴るシーンがあって。手加減すると蹴っているように見えないので、生田さんからも「思い切りやっていい」と言われて。一発で決めようと思ってドカーン! と(笑)。ヒールで回し蹴りをしなきゃいけなかったので結構大変でした。
女優陣から見た菊川玲二の魅力
Q:おバカでどスケベだけど、正義感あふれる菊川玲二という男を女性としてどう思いますか?
菜々緒:友達だったら最高ですね。
本田:わかります。どう考えても友達!
菜々緒:友達だったらここまでバカができる面白い人はいないと思うんです。でも自分の彼氏となると大変だなあって。バカすぎるし(笑)。
本田:仲さんが演じている純奈さんという恋人がいながら、迦蓮に心奪われたりするし。自分の欲の向くままに行動している感じがもうダメです(笑)。
仲:純奈も結構おバカなんだなあと思いますね。でも、ある意味、純奈は男性の理想の女性像だと思います。「玲二くん、ずっと待っているね」という女の子ですから。普通だったら「ホント無理!」ってなると思うんですけど(笑)。
Q:仲さんは約3年ぶりに三池組に戻って、撮影現場はいかがでしたか?
仲:今まで三池監督とは何度か一緒にやらせてもらっているんですけど、初めてちゃんとした芝居を撮ってもらえたなと思いましたね(笑)。
菜々緒:どういうことですか?
仲:今までコメディーだったり、アクションだったりと、ちょっと過剰な演技が多かったんですけど、今回はちゃんとした人と人との会話、心というものが感じられるシーンが珍しくあったんです。演じながら「あ、監督にこういうところを撮ってもらうのは初めてだな」って思って。逆に、ギャグでも入れないとちょっと恥ずかしいと思ってしまったくらいでした。監督から「ちゃんと女優してんじゃん」と言われて、今まで何だと思われていたんだろうと思いましたけど(笑)。
Q:本田さん、菜々緒さんは三池組初参加でしたね。
菜々緒:すごく監督の熱意みたいなものを感じましたね。あるもので顔を攻撃されるシーンがあるのですが、そのカットは監督自ら胡蜂を演じられていました。アクションシーンもそうですけど、全て自分の手でやろうとするところにすごく作品に対する愛情を感じました。
本田:わたしは、どちらかというと男っぽい、殺伐とした現場というイメージがあったんですけど、全く違っていて。三池監督がすごく穏やかな現場作りをしていると感じました。とても良い現場でした。ぜひまたご一緒できたらうれしいです。
劇中で語られる男の揺れる本音について女優陣の間で飛び交うガールズトークの盛り上がりには、筆者も一男性として痛い部分も。そんな発言をしながらも、それでもどこかに本シリーズの主人公である菊川玲二への愛情がヒシヒシと伝わってくるところに、完成した作品に対する自信がしっかりと感じられたインタビューだった。
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映画『土竜の唄 香港狂騒曲』は12月23日より全国公開