のん、本当の自分を探す前向きな「攻殻」少佐の戦いに感銘!
提供:東和ピクチャーズ
改名を経て、女優・“創作あーちすと”として精力的に活躍するのんが、世界中のクリエイターを魅了する日本発の近未来SF「攻殻機動隊」をハリウッドで実写映画化した『ゴースト・イン・ザ・シェル』を一足先に鑑賞した(全国公開は4月7日)。脳以外の全身を義体化(=サイボーグ化)されたヒロイン・少佐の失われた記憶とアイデンティティーを求めて、苦悩しながらも毅然と職務をまっとうする姿から、彼女が受け取ったメッセージとは。(編集部・入倉功一/写真・尾藤能暢)
■のんが2歳のときに公開されたアニメ「攻殻」に女優的視点で共感
「攻殻機動隊」の名を世界に広めたのが、押井守監督の長編アニメーション『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995年公開)。公開された当時、のんはまだ2歳。しかし、色褪せない映像美とヒロイン草薙素子の魅力は、彼女をすっかり魅了した。「これまでアニメ版を観る機会がなくて、ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観た後で拝見しました。素子がものすごくかっこよかったですね。脳以外を義体化しているからこそ、ゴーストを持っていても、無駄な動作や表情がなくて、ほとんどまばたきもしない。そういった演出が観ていて腑に落ちました」。
映画はアニメ版同様、全身義体となった少佐を“製造する過程”から幕を開けるが、「あの映像がとても神秘的に描かれていて、そこから引き込まれました」と目を輝かせるのん。アニメ版でもおなじみの、少佐が高層ビルからダイブするシーンについても、「サイボーグだからこそ、少佐はあんな場所から飛び降りても怖さを感じない。でも彼女はそんな自分に疑問を持って生きている。その痛みが伝わってくるようで印象的でした」と女優ならではの客観的な視点から語った。
■過去に振り回されない!自分のゴーストを信じて決断する意思の強さがかっこいい
アニメ版は、自分の存在について問いかける哲学的なテーマや膨大なセリフ量もあり、一部では難解という声もある。しかし、のんは「難しいという感覚は持たなかったですね。でも答えの出ないテーマなので結論付けようとするとそれは難しいかもしれない」という。「ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』では、少佐のバックボーンがはっきりと描かれていて、テーマがよりはっきりとした形となって、一つの結論が出るものになっていたのでより観る方に寄り添った映画になっていました」と語る。
その言葉の通り、ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』では、スカーレット・ヨハンソン演じるヒロイン“少佐”の目的は明確で、奪われた自分の記憶を求めて戦う彼女の姿が美しい映像とともに描かれており、のんも、「とても繊細でかつ力強い作品だなと思いました。だまされていた少佐が、過去と向き合ったときに下す決断には、彼女の意思の強さが感じられて、とてもかっこよかったです」と笑顔。
「私自身は、ずっと悩むということがないんです(笑)そんなことは関係なく、自分のやりたいことに突き進むので。でも、少佐の境遇は特殊です。この状況になれば判断が揺らぎそうなものなのに、今の自分のゴーストを信じられる少佐はかっこいいなって思いましたね」。
■やりきれない思いを抱える少佐に胸が苦しくなる
そんな少佐の決断を、「意外でしたが、自分のゴーストを信じたのだと感じてすてきだなと思いました」と語ったのん。劇中、少佐は失ったはずの記憶に悩まされ、「自分が自分ではない感覚」を覚えることを告白するが、「私自身はそういう感覚は全くないです。しかも少佐の場合とても普通ではない境遇ですし」と明かす。演技の場で役と自分の区別がつかなくなることもないという。「私の場合、演技をしていることは自分で認識しながらその役を表現していきます。準備段階で、どういう役か考えて構築していく作業もありますし、区別がつかなくなったことは一度もないですね」。
しかし同時に、「ハリウッド版は、よりダイレクトに胸にくる作品になっていました」と言うのん。
「少佐は、『お前は他のゴーストのない奴等とは違う』と言われても、でも少佐の体は脳以外サイボーグという大勢の人たちとは違う。そんな葛藤は、過去があるからこそより表面に出て来て、その微妙な悲しみを抱えながらも今を生きている少佐の姿に胸が苦しくなりました」。
少佐への共感を示したようにも思える言葉だが、「共感とは違います。私は苦しいという感情が共感かどうかは分けて考えているので。職業病かもしれませんが、なんで? なんで? と掘り下げながら客観的に見ています。共感できる部分といえば、ショートヘア(笑)でしょうか。横の髪を伸ばせば似ていますかね」とはにかむ。
■スピルバーグもハマる!世界を魅了する魅力に感服
押井監督の『GHOST IN THE SHELL』は公開当時、日本のアニメとして初めてアメリカ・ビルボード誌のビデオチャートで1位を獲得し大きな話題になった。革新的なアニメーション表現を、『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が絶賛し、ウォシャウスキー姉妹の大ヒットアクション『マトリックス』に影響を与えるなど、世界的なトップクリエイターをも魅了してきた。今回の実写化も、もともとはスティーヴン・スピルバーグが率いる映画会社ドリームワークスが獲得したものだ。
世界的な評価についてのんは、「実写化されるまでこの作品を存じ上げてなくて。本当になんの先入観もなしで、まっさらな状態で拝見しました」と語りつつも、世界で愛される魅力はしっかりと肌で感じとったようで、「現実とは全く違う世界なのに、観ている方がその世界観を信じられる作品だと思いました。そうなると、観ているうちに、どんどん作品に集中していきますよね。そういった、映画の中のSFの世界やその中のキャラクターの魅力をリアルに感じられると人を惹きつけるのかもしれないですよね」と分析する。
■のん、「攻殻」のように世界へ! 楽しいことに向かっていきます!
世界を魅了するといえば、最後まで観客を引きつけてはなさないハリウッド女優、スカーレット・ヨハンソンの演技にも「アニメ版を観て、忠実に少佐を再現されていたんだなと感じました」と感激したというのん。
「スカーレットさん、大好きです。見る方を最後まで引っぱって集中させてくださるというか。クライマックスの戦いで、アニメ版と同じシーンがあるのですがそのスカーレットさんがめちゃくちゃかっこよかったです。私は、後半の桃井かおりさんとスカーレットさんの2人の演技が一番好きで、胸がいっぱいになりました。忘れられない! 桃井さんとは『創作あーちすと NON』という本で対談させていただきました。どんな役をやっていらしてもその度かっこよさにしびれますよね」。
のん自身も、ハリウッドのアクション映画にも興味津々。「挑戦したいですね! 笑えてクールなアクションヒーロー役に憧れています」と笑顔を見せると、「女優兼、創作あーちすととして活動させていただいてますので、これからもいろんな表現に挑戦していきたいと思っています。粛々と楽しい活動に向かって一生懸命頑張りたいと思います」ときっぱり。自分の正しいと思う信念に従って行動するその姿を少佐に重ねると、「私の場合は、楽しいことに向かってどんどん行動していきます! お楽しみに!」と力強く語った。
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』は4月7日より全国公開
『ゴースト・イン・ザ・シェル』オフィシャルサイト