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映画館はここまで自由になれる!横浜・藤棚商店街の名画座はフツーじゃない!

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

 初めての劇場、ワクワクドキドキ胸は高鳴る! 相鉄線・西横浜駅。モロ昭和の風情の藤棚商店街は俳優・歌手の黒沢年男の出身地、脳内に「時には娼婦のように」をループし歩くこと10分。京急線・戸部駅からも徒歩10分。おお、あった~! これほど節操なく幅広く奇抜な特集をしてるところはない。特撮映画、旧作テレビアニメや劇場アニメ映画、アクション洋画、ロマンポルノ、インディペンデント系の新作、ハリウッドやヨーロッパの旧作、ミュージカル……何でもアリ!

今月の名画座「シネマノヴェチェント」

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 川崎市の「読売ランド前」にあった、バーとミニシアターの「シネマバー・ザ・グリソムギャング」。ロバート・アルドリッチ監督の『傷だらけの挽歌』(1971)の原題が店名で、映画と飲食をミックスした知る人ぞ知る映画人とマニアの集う場だったが、建て替えの為閉館。オーナーは条件に合う物件を探し、ここを見つける。元カラオケパブを居抜きでリフォーム。2015年、日本一小さな劇場として再始動。

 ノヴェチェントはベルナルド・ベルトルッチ監督の『1900年』(1976)の原題。イタリア語で20世紀の意、名の通り世紀の映画総てを網羅? 階段を上がるとまんまの丸いカウンターに椅子。1970年代を中心とした洋画ポスターが所狭しと飾られる。

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カウンターには様々なチラシやDMも置かれる。

 唐揚げなどのフード全品、ビール、日本酒、焼酎、他ドリンクも全品500円。ここが32席の「トラットリアノヴェチェント」。イベントでコンパクトな店内で監督や出演者を囲み観客が交流。場内はイエロー、紫、グリーンのカラフルな28の座席。閉館した「吉祥寺バウスシアター」のもので、そう言えばこんなシートだった。

誰もが交流できる

 前店から錚々たる映画人が来場、井上梅次監督、石井輝男監督、原田芳雄氏……今となっては貴重な方々。監督や俳優だけでなく制作会社やスタッフに特化した企画等、ユニークなイベントは枚挙に暇がない。どんな大監督や名カメラマンも、この空間に入ったら同じ映画好き同士で話せる。しかし最近は、昭和の御大がどんどん亡くなり中々イベントを組めなくなってきたという。

支配人・箕輪克彦さんに訊く

 「3年経ってようやくお客が付いたね、物好きな人が増えて。頼んでないのに手伝ってくれたり。去年の始め頃からアニメをやって、ロボットものは入りがいい。それと特撮ものがウチの2本柱になって、最近は景気がいい」。「月光仮面」「光速エスパー」等のイベントは毎回大入り。「宣弘社はめっちゃ協力的でありがたい、成りゆきでやるようになったんだけど。自分からやりたいものは、なかなかお客が入らないんだよね~」。

 オーナーの箕輪さんは川崎市出身の54歳、ほぼ同世代。風貌や語り口が芸人のよう。ざっくばらんでムチャ面白い。小学生だった'70年代はパニック大作の全盛期、都内の封切館へ通い、大きくなると旧文芸坐、大井武蔵野館、下高井戸東映と当時の名画座でニューシネマを観まくる。監督になることが夢で、8mmで製作し文化祭で上映。日大芸術学部映画学科からテレビの下請け会社に就職するも、夢と現実とのギャップに直面。実家の酒屋を手伝いながら、映画を公開する側へシフトし、現在に至る。

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50~80年代のアクション、刑事、犯罪映画のポスターの数々。

 「スケールのでかいのが映画だと思って洋画ばっかり観てて。フェイバリットムービーは『メリー・ポピンズ』(1964)なんです。邦画に目を向けたのは今村昌平監督から。あの洋画でも邦画でもないような世界観に、何これ!?  って。俺にとって日本の監督No.1です。終生好きなのはやっぱりロバート・アルドリッチ。それからウィリアム・フリードキン、ベルナルド・ベルトルッチ、リドリー・スコット。でもこの3人、フリードキンは『フレンチ・コネクション』(1971)と『エクソシスト』(1973)がベストで『恐怖の報酬』(1977)で終って、ベルトリッチは『ルナ』(1979)まで、スコットは最初の3本はそれこそ“神”ですけど、それ以降……3人共まだ生きてるけど、俺の中ではもう死んじゃってることにしてます(笑)」

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お客を選ぶ映画館

 「お客様は神様、じゃなくって、俺が大事で、俺が神です(笑)ストレスをかけるヒトは出禁ですよ。殆ど自分でやってるんで、倒れたらお終いですから。自分が楽しんで客にお裾分けしてるみたいなもんです。平日は1人で全てワンオペ、週末のイベントだけ補佐で1名来てもらいます」。

 うっかり上映作品を間違えちゃったことも。「『世紀の楽団』(1938)の上映なのに『世紀の女王』(1944)をかけちゃって(笑)、15分くらいしたらお客が教えてくれたんです。ウチの場合、平日の日中6~7人なら結構入ってるほうで、そういう時に限ってね(笑)。やり直して、お詫びにドリンクとサービス券あげましたよ(笑)。お客が少ないのに慣れてるから、沢山来るとヒヤヒヤする。グダグダ文句を言うヒトは来なくていい。わざわざ金を払ってまで不快な思いをしなくてもね。ウチはお客を選ぶんです」。

ウチは、フツーじゃない

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女子トイレにはキャメロン・ディアス、男子トイレにはブラッド・ピットが!

 「トークや交流会のフォーマットが一応あるけど、ゲストもナマの人間だからなかなかその通りならなくて。先日79歳で亡くなった川地民夫さんみたいな年輩の方に、そうしないでください、とも言えなくて(笑)。トークが始まる前にいろいろ話しちゃってて、いざ時間になったら“喋っちゃったからお終いでいい?”って(笑)交流会でも、テーブルが3つあるところをゲストが30分づつ回ることになってるんだけど、ちょっと話したらすぐカウンターに来て、呑んだまま動かなくなっちゃったり。でも、怒るお客はいないけどね」。

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作品の買いつけと配給

 夢だった作品の買いつけ、配給を3本実現。年に1本はやりたいという。『ファイナル・オプション』(1982)、『恐るべき相互殺人』(1974)、そして現在上映中の『カントリー・サンデー/恐怖の日曜日』(1975)。ジェームズ・コバーンアーネスト・ボーグナインらの、テレビやDVDで発表されているものの日本の劇場で未公開作品を、今、配給しようなどと、他の何処がやるだろう!? 僕ら以上の世代でないと理解されないかもしれないけど……素晴らしい!

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スティーブ・マックィーン、クリント・イーストウッドの人気は不動!

 『アウトレイジ』シリーズ等の宣伝ヴィジュアルを手掛けるデザイナーの中平一史氏による、これら作品のチラシ&ポスターがシビれる! 写真のトーンや配置、日本語ロゴ、フォント、コピーに至るまで総て'70年代テイスト。元チラシ小僧で今もコレクターである僕にはど真ん中のツボ。70年代~80年代に数々の東宝東和のビジュアルの殆どを手がけた映画宣材の巨匠・檜垣紀六氏との対談「チラシ・ポスタービジュアルで見る映画史」は僕のようなグラフィックの仕事に携わる者にはまさに垂涎ダラダラ~。

 「中平さんには実費しかお支払いしない代わりに、一切の口出しはしない、ということでやっていただいてます。次回作品『ナイトビジター』(1970)は、題字を檜垣先生にやっていただき、中平さん含め3人のデザイナーがからむことになってて豪華ですよ」。

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まるで映画のような環境で

 若いに人に何かメッセージは? と訊くと「ない」とキッパリ。昨今の映画、映画界に対しては「ウチは流行も何も関係ないから」

 藤棚商店街の魅力を訊くと「さびれてるところ。まるでゾンビみたいだね、やってるのかいないのかわからなくて。5日間閉まってるな~と思ってると2日くらい開いてたり(笑)シャッターが半分開いてて、あれ? みたいな。行つけの『濱のくじら屋』が昨年末終っちゃって、ほんと何もないね。俺が好きなものは大体なくなる運命にあるんだよね~」。

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『北国の帝王』 アーネスト・ボーグナイン リー・マーヴィン 監督:ロバート・アルドリッチ 1973年

 地域との関わりは、「外様なのは相変わらず。プライドの高いハマっ子の中には中々入れない。ま、輪に入りたいとも思わないけど」と言いながらも、黒沢年男の弟、“三年目の浮気”で知られる歌手の黒沢博さんの藤棚商店街を舞台に主演した映画の上映イベントや、近隣の様々な飲食店を応援するコラボも行っていて、毒舌の中に箕輪さんの“地域愛”が滲む。

 周辺にはまだ銭湯が多く、創業80年の「萬歳湯」で2度ほどイベントを開催。無声映画『月世界の女』(1931)を弁士と生演奏で、昨年はアニメフェスティバルの一環で『映画クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999)を上映。「若いお客で銭湯入ったことないってヒトが来て。だから今度は入浴してから映画を見るようにしようと思って」。

 今後の抱負は「とにかく続けたい。面白いと思ったことは、どんどんやる。偶然必然というか、ここを軸としてね、合縁奇縁、いろんなヒトが会うべくして会っているんです。お客と作ってるとこがあるから、人が関わってくると面白くなる。俺の意向は5~6%しかないよ。面白いと思えなかったら、人生終ってもいいんじゃないの?

 次回、フルで上映イベント~交流会に参加してみようと思う。我こそはと思う君、勇気を出して申し込んでみてはいかがだろうか!

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映画館情報

シネマノヴェチェント

住所:〒220-0051 横浜市西区中央2-1-8 岩崎ビル2F
TEL:045-548-8712
席数: 28席(シネマシート)+3席 (エクストラシート)
URL:http://www.cinema1900.wixsite.com/home
FB:http://www.facebook.com/cinema1900yokohama
Twitter:http://www.twitter.com/cinema1900

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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