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通り魔事件の被害者が主演、元引きこもりが監督作品がソールドアウト!【ロッテルダム国際映画祭】

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“プチ引きこもり”&通り魔事件の被害者という人生の辛酸をなめた経験を映画に注ぎ込んだ中島良監督(写真右)と谷口吉彦(オランダ・ロッテルダム市内にて)
“プチ引きこもり”&通り魔事件の被害者という人生の辛酸をなめた経験を映画に注ぎ込んだ中島良監督(写真右)と谷口吉彦(オランダ・ロッテルダム市内にて)

 2007年のぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞・エンタテインメント賞・技術賞の3冠を受賞した、中島良監督の映画『俺たちの世界』(2007)が、第37回ロッテルダム国際映画祭でヨーロッパ・プレミア上映された。中島監督とともに現地入りした主演俳優の谷口吉彦は「前2回の上映はソールドアウト。こんなにお客さんが見に来てくれて本当にうれしい」と笑顔を見せた。

 同作品は苦節4年の力作だ。大学時代、社会生活になじめず“プチ引きこもり状態”だった中島監督が、その状態から脱却すべく、高校時代から親しんでいた自主映画製作を決意。オリジナル脚本には、当時、社会をにぎわせていたスーパーフリー事件や神戸児童殺傷事件などを彷彿(ほうふつ)とさせる出来事を盛り込みながら、今まさに自分たちが置かれている“俺たちの世界”をつづった。

 キャストはインターネットで募集した。応募した谷口は「当時自分も役者として成りたい自分になれない悔しさを抱えていたので脚本に共感した。何より中島監督の、『今の日本映画は流行しているものはたくさんあるけど、どの作品も観客が安全な距離感を持って接することができるものばかり。せっかく作るなら僕は、お客さんの心を侵蝕するような映画を作りたい』と熱い言葉を言われてガツンとやられた」。 週末を利用して、コツコツ撮影すること3年。その間、谷口が通り魔に腹部を刺されて、全治2か月の重傷を負う事件が起こった。谷口の腹部には、19針にも及ぶ生々しい傷跡が今も残っている。

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 谷口は「その一件で、死生観がガラリと変わりました。劇中で演じたヒロキという役も、レイプ事件を起こし、警察に追われる立場となって初めて“生”への渇望を抱く設定。まさに役と自分が置かれている状況がリンクしてヒロキ役に近づくことができた。あの事件は、いろんな意味でいい勉強になりました」とあくまで前向きだ。

 そして編集には1年を要した。そのうちの半年間は編集資金がなくなり、中島監督が製作会社でアルバイトしていた時間だ。計4年間、日常に追われながら映画製作へのモチベーションをキープするのは並大抵ではないが、「最初はわずか3人でスタートしたプロジェクトが、だんだん仲間が増えていって、それが作品の力となった」と中島監督。一方、谷口は「映画に参加した人は僕と同じように、日々の生活で悔しさを抱えている人たちばかりだった。そんな彼らが一切、手を抜かず、互いに高い所を目指そうという共通した思いがあった」と言う。

 現在、中島監督は映画製作会社に就職し、谷口も俳優として新たな一歩を踏みだそうとしている。中島監督は「まだほかの映画祭から招待を受けているので、それが一段落したら次のステップへ進みたい」と熱く語った。

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