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アカデミー賞ノミネート『潜水服は蝶の夢を見る』の73歳の脚本家が語るジョニー・デップとのかかわり

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73歳のロナルド・ハーウッド
73歳のロナルド・ハーウッド

 フランスの女性ファンション誌「エル」の元編集長として活躍する人生から一転、脳梗塞で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまった男ジャン=ドミニック・ボビー。その彼の自伝小説を見事に脚色したのが、2002年『戦場のピアニスト』でロマン・ポランスキーと共にオスカーの栄冠を勝ち取ったロナルド・ハーウッド。今作「潜水服は蝶の夢を見る」を脚色する経緯と、主人公の心情を視覚化するアイデアはどうやって生まれたのかを語ってもらった。

-フランス語で脚本を執筆されたのですか?

(ロナルド・ハーウッド)いいえ、フランス料理店で話すわたしのフランス語は完璧だけどね(笑)。まず、英語に翻訳されたものを読み、英語で映画化されるものだと思っていたんだ。この脚本の初稿を書いてから、何もかもが始動するまでに2年間あった。最初にユニバーサル・ピクチャーズから許可がおりて、英語で制作してジョニー・デップ主演の予定だった。彼らはロンドンに居た私に「ジョニーが脚本を気に入ってくれて出演することになった」と言ってくれ、その後すぐに映画『ネバーランド』のロンドン・プレミアに招待された。この時、ジョニーがわたしの目を見つめながら手を握って「本当に素晴らしい脚本ですね。あなたと仕事ができる日が待ちどおしい」と言ってくれたが、わたしはそばにいた妻を振り返って「たぶん彼は、参加しないだろう」と言ったとおりになってしまった。彼はすでに『パイレーツ・オブ・カリビアン』の続編を連続で撮影する承諾をしていたんだ。したがって一旦中止になり、もう決して映画化は無理だと思っていた矢先、パシェ・レン・プロダクションズがファイナンスすることになり、彼らは最初不思議なことに英語でやりたがっていたが、すぐに英語とフランス語の両方に変わり、それだと予算が向上しすぎて無理だという判断で、結局フランス語に決まったんだ。最もこの決断には、わたしはかかわらなかったけれどね。

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-今回の脚色で難解だった点を教えて頂けますか?

(ロナルド・ハーウッド)キャサリン・ケネディ(プロデューサー)からオファーがあった1年半前にこの本を読んで、困難な状況下でも勝利する人間の最も素晴らしい遺言だと感じたんだ。ただいったんはイエスと返事はしてみたものの、どうやってストーリーを伝えられるかわからなかった。実は、再読もせずに返事を早急にしてしまって、最終的に仕事に取りかかったときから約2週間くらいパニック状態に陥ってしまった。それは、ベットで横になりながら昏睡状態のふりをしたり、片目を閉じたり、のどが詰まって呼吸困難な振りをしてみたりと、妻はわたしが心臓マヒでも起こしたんじゃないかと思ったほどやや鬼気迫ったもので、結局は息詰まってしまい、できないと判断してお金を返済するつもりでいた時に、青天のへきれきのように良いアイデアを思い付いたんだ。それは、主人公をカメラにすることで、カメラで目を閉じるように見せたり、左右に動かしてみたりと、わたしは技術面は全く知らないが、彼ら(スタッフ)がどうやろうが、この時の私にはどうでも良かったんだ。それは、アイデアに私は完全に解放されていたからだろう。その後は5、6週間で書き上げ、このアイデアが映画の重要な部分になったと思っている。

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-ジュリアン・シュナーベル監督との仕事はいかがでしたか?

(ロナルド・ハーウッド)彼とは一緒にセットで仕事をしていないんだ。わたしがこれまで書いた脚本の中で、書き足すことが無かった脚本はこれが初めだ。初稿を送ってすぐに許可がおりて、その後はジュリアンがストーリーを発展させたけど、その内容さえも話し合うことはなかった。いわゆる巨匠の観点から引き継いでくれたんだ。ただ彼は、わたしの脚本にほとんど忠実で、付け加えられたのは、芸術と呼ばれる映像の発明だったと思う。

-自分の考えていることを、どうやって人々の興味に結びつけるのですか?

(ロナルド・ハーウッド)それはごう慢なことなんだ。自分の書いたものを誰かに読ますということ自体が最もごう慢なことなんだよ。(笑)ある意味自信でもある。ある作家は、それが理由で駄目になってしまうほどだ。私自身はそれが妨げにならなかったがことに驚いている。それには、いつも自分の内部にあるものを書き続け、ペルソナ(他人に見せるうわべだけの人格)とは全く別のものにすべきなんだ。ある意味自己防御でもあるよ。

-現在起こっているWGA(米脚本家組合)のストライキについて何か主張したいことがありますか?

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(ロナルド・ハーウッド)わたしもストライキしていますよ。実は、60年代にWGGB(英脚本家組合)の議長をしていたんだ。今は単なるWGAの会員だが、当時はWGA、WGGBの両方で交渉するメンバーの一人で、交渉中はプロデューサーと次のプロジェクトについて話すことができなかった。

 今では、世界を股にかけて活躍する脚本家だが、そんな彼にも駆け出しの時があり、イギリスのシェークスピア・カンパニーでロナルド・ウルフィットのパーソナル・ドレッサーとして働いていた時期があったらしい。現在73歳であるにもかかわらず、おとろえることを知らぬその活力に敬意を表したい。(取材・文:細木信宏 シネマトゥデイ)

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