ボビー・バレンタインを題材にした日本野球のドキュメンタリーがニューヨークで上映
これまでアメリカではまったく知られていなかった日本野球の全ぼうを、選手や監督だけでなく、ファンからの視点も含め、1シーズンという異例の期間を追ったドキュメンタリー作品『ザ・ゼン・オブ・ボビー V.』(原題)が、トライベッカ映画祭で公開され、現在、千葉ロッテマリーンズの監督を兼任するボビーが衛星放送で記者会見に応じてくれた。
『ザ・ゼン・オブ・ボビー V.』は、プロ野球で外国人監督として初の日本一に輝いたボビー・バレンタイン監督と、日本野球を題材にした映画で、3人のニューヨーク大学の学生が提案したプロジェクトをアメリカのスポーツ・ケーブル番組ESPNが制作を引き受けて完成した。
完成した作品について「素晴らしい映画になったと思う。彼ら(学生)は、シーズンを通して6時に起床し、夜中2時に寝ていたんだ。もちろん20代の青年たちには簡単なことかもしれないが、そういった彼らの熱意には驚かされたよ。お酒もまるで長年の友人のようにわたしと酌み交わすことができたしね。今は彼らの成功を心から喜んでいるよ」とコメントした。
これまでの映画では、日本野球の描かれ方は滑稽といっていいほどの誇張と想像が織り込まれ、正面から描いたものは少なかった。しかし今回は真正面から日本の野球が描かれている。本作のメッセージは「和」だと語るボビーは「もしこの映画を通して、スクリーンやテレビから日本野球のエッセンスを吸収できたら、日本野球が正当に評価されたことになると思う。それはアメリカ人がこれまで学んできた格言や教訓などが、すっかり過去のものとして葬り去られてしまうという意味でもあるよね」と作品の影響力について話してくれた。
最後にアメリカ人記者から日本での人気について質問されたボビーは「1995年に来日したときは、思うような結果が残せなかった。再び日本に戻り、2005年に日本シリーズを勝ち取ったときに、チームやファンがわたしの監督としての決意や判断を認めてくれたんだ。日本の野球を活性化させるためにわたしがここにいるということを、そしてただお金を稼ぎに監督をやっているわけではないということを理解してくれたんだよ」とうれしそうに答えてくれた。
日本での知名度は国民的といっても過言ではなく、テレビ出演や、彼の名前がついた食べ物やビールまでもが発売されている。アメリカと日本、2つの国で野球を体験したボビーにとって、野球は単なるスポーツではなく、歩んだ道そのもといえるだろう。(取材・文:細木信宏 ニューヨーク)
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