水野晴郎氏が死の直前、最後に観た映画『ホット・ファズ』の感想は?
水曜ロードショー、そして金曜ロードショーの映画解説を務め、人々に広く愛されていた映画評論家で、今月10日に肝不全で亡くなった水野晴郎氏が、最後に映画を楽しんだ様子を、水野氏のまな弟子である中野ダンキチに聞いた。
映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』写真ギャラリー
映画を愛し続けた水野氏が観た作品は、来月公開されるイギリスのコメディー映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』という映画だった。
今月初めから体調が芳しくなかった水野氏は5日、「気分がどうもさえないなあ……」と中野にぽつりとこぼした。そのとき中野の脳裏に浮かんだのが、配給から送られてきた同作のサンプルDVDだ。「コメディーを観て元気を出してほしいと思って」と、中野は水野氏に本作の鑑賞を提案。病床で体温や血圧をチェックしながらの鑑賞となった。毒舌なコメディーの本作だが、水野氏に大笑いする元気はもう残っておらず、終始ほほ笑みながら楽しそうに観ていたという。
鑑賞後、映画会社にコメントを送るため水野氏に感想を聞いた中野だったが、「今日はちょっと疲れちゃったから、月曜にしよう」と言った水野氏は、その5日後に死去。感想は二度と聞けなくなってしまったが、中野は水野氏が鑑賞中につぶやいた言葉を教えてくれた。
「この映画は、編集がなかなか面白いねえ」
この言葉が、映画を愛し続けた水野氏の映画を語った最期の言葉となった。
水野氏が長年、自らの全精力を注いでいた映画『シベリア超特急』シリーズのファイナルは、関係者たちの力で完成に向かってゆっくりと歩みを進めている。内容を聞くと、「人形劇、または朗読になるかもしれません。どんな形になっても、水野晴郎は簡単に死なない! ということを自分たちの力で見せたいんです」と語る中野の言葉には、恩師への愛が満ちていた。
水野氏が最期に観た『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』は、ロンドンのエリート警察官が、左遷された田舎町で活躍する爆笑アクション・コメディー。クエンティン・タランティーノ監督から「最高傑作!」と絶賛を受け、海外の映画評サイトでは満足度89パーセントを記録した映画だ。日本では、“『Hot Fuzz』劇場公開を求める会”によるネット上での署名運動により公開が決定された話題作だ。
映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』は7月5日より渋谷シネマGAGA!ほかにて全国公開