スパイク・リー監督、NBAのスーパースターを30台のカメラで撮った映画を語る
現代社会の問題や政治的問題を扱う、社会派黒人監督スパイク・リーが、初めてトライベッカ映画祭に出品した映画『コービー・ドゥイン・ワーク』(原題)について、Apple Store(アップルストア)のイベントで語ってくれた。本作は、NBAのスーパースター、コービー・ブライアントのプレーオフの試合を、30台のカメラで追った作品だ。
製作経緯についてスパイク監督は「3年前にカンヌ国際映画祭で、映画『ジダン 神が愛した男』を観たんだ。すべてのカメラがジダンに向けられているのを観て、この手法はバスケットボールでも使えるかもしれないと思ったんだ。そしてコービーを誘ったんだ。それからNBAのコミッショナーの許可を得て、コービーが所属するロサンゼルス・レイカーズのヘッドコーチ、フィル・ジャクソンからも許可を得た。撮影は、30台のカメラを使って、普段は入れないロッカー・ルームやベンチコートまですべてを撮影した。そしてコービーには、マイクを付けてもらってプレーしてもらったんだ」と話してくれた。
筋書きのないスポーツを題材にすることに不安はなかったのだろうか? 「そこが面白いんだ! 確かにつまらなくなる危険性もあった。それにコービーがケガをしたら映画は完成しないし、ファウルでベンチに座ってたり、退場させられても同じ。とりあえず試合前に『ファウルと退場だけは絶対にするな!』って何度も忠告したよ(笑)」と苦労を語ってくれた。
テレビでのバスケットボールの中継については「テレビ中継には、いつもイライラさせられるよ! ある程度は違った角度で撮っているが、想像力がなくつまらないし、迫力に欠けるんだ。でもこの作品はプレーヤーの観点から観ることのできる画期的なものだから、イライラさせられることはないね!」とコメントしてくれた。本作は、トライベッカ映画祭で公開された後、アメリカのケーブルテレビで放映される予定だ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)