スパイク・リー監督「アメリカ軍のケアこそ、不名誉なことだ」と吠える!
映画『セントアンナの奇跡』が日本で公開中のスパイク・リー監督が、本作について語ってくれた。本作は、第二次世界大戦中のイタリアで実際に起きた虐殺事件を基に、黒人兵士の葛藤(かっとう)と心の交流をサスペンスタッチでつづる戦争ドラマ。
黒人部隊(バッファロー・ソルジャー)とこの時代について学んだことは「原作者のジェームズ・マクブライドが、黒人兵たちを紹介してくれた。彼らの一部は、これまでの政府の黒人兵士の対応に不満を持っていたが、大統領がオバマに変わって喜んでいたよ。まさか、生きているうちに黒人の大統領が誕生するとは思ってもいなかったようだからね。劇中で『おれは将来のために戦っている』というセリフがあるんだけど、彼らはまさにそのために戦ってきたんだよ」とのこと。
当時のバッファロー・ソルジャーたちが受けた侮辱は、今日のイラク戦争で戦っている黒人兵士に匹敵するところがあるのか? 「現在のアメリカ軍兵士は、黒人とヒスパニック系の兵士でほとんどが構成されている。それに、侮辱を受けて帰還した兵士は、人種の違いによるものではないと思うんだ。現在は、まったく人種に関係なく、ヒドい目に遭わされているからね。もっとも問題なのは、帰還した兵士の自殺者が異常に増えていることなんだ。さらに、帰還兵による殺人も増えているよね。アメリカ軍は、帰還兵の心理的ケアがまったくできていないんだよ。オレは、それこそが不名誉なことだと思うんだ!」と問題点を指摘した。
次回作として予定されている映画『インサイド・マン2』の製作はどうなっているのだろう? 「今のところ、脚本待ちの状態さ。前作よりも素晴らしい脚本でなければ、デンゼル・ワシントンもジョディ・フォスターも、クライヴ・オーウェンも出演しないと言っているよ」とのことだが、今のところジョディ以外の出演は決定している。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)
映画『セントアンナの奇跡』はTOHOシネマズ シャンテ、テアトルタイムズスクエアほかにて全国公開中