日本人は鬼畜なのか?人の心を持つのか?南京大虐殺を描く映画がついに日本で配給決定!
1937年の日中戦における日本軍の南京攻略を描いた陸川監督『南京!南京!』が、日本公開されることがわかった。同作品はスペインで開催中の第57回サンセバスチャン国際映画祭のコンペティション部門に出品されており、現地時間21日に行われた公式会見の席上で陸監督が明かしたもの。
日本の配給会社側の正式発表を控えて、社名を出すことは控えたものの、陸監督は「これはまさに最新の情報なのですが、日本の配給会社が決まりました。公開は来年になると思う。念願だった日本公開が決まってうれしい」と笑顔を見せた。
同作品は日本でいまだタブー視されているいわゆる南京虐殺事件を、日本兵と中国兵の両方の視点から描いた2時間15分の大作だ。今年4月に公開された中国では、主人公の日本兵・角川(中泉英雄)が、繰り返される一般市民への虐殺、強姦などの蛮行にいたたまれなくなって最後に自殺を遂げることから、「日本寄りだ」の批判が相次ぎ、陸監督には殺害予告の脅迫状まで届く騒動に発展している。
本作は、今年度のコンペ作の中でも一番の問題作と言われている。プレス上映では拍手喝采に包まれ、その直後に行われた会見は、通常30分程度で終わるところ、各国記者からの質問が相次ぎ1時間にも及んだ。
中でも多かった、「どこまでが真実で、どこまでがフィクションなのか?」の問いに、陸監督は「この映画は企画の立ち上げから完成まで4年かかってます。その間、私は何度も日中を往復し、ある元日本兵にもインタビューしたり、彼らが残した日記や膨大な数のプライベート写真など、徹底的にリサーチしました。なので、あくまで真実がベース。唯一、フィクションがあるとすれば映画の後半、南京を政略した日本兵たちが儀式をするシーンのみ。あれは(天皇を崇める)メタファーとして取り入れました」と説明した。
また、日中両方の視点から描いた理由については「あの戦争で何があったのか。両方の視点で描くことが真実を正確に伝えることが出来ると思ったのです。そのために私は、中国で裏切り者と言われていますが、私は多くの中国の戦争映画で見られるような、日本人を鬼畜として描きたくなかった。なぜなら、私は元日本兵の日記を読んだ時、人間の心を感じたからです。この映画は、決して日本人を批判するために作ったものではない。この映画をきっかけに、お互いの史実を見直す、日中の架け橋になることを願ってます」と語った。
コンペの結果は26日に発表される。今年のコンペ部門には、『クラス』で07年のカンヌ国際映画祭の最高賞を受賞したローラン・カンテ監督を審査委員長に、韓国の鬼才ポン・ジュノ監督、イランのサミラ・マフマルバフ監督など蒼々たるメンバーが顔を揃えている。彼らがどんな評価を下すのか、注目したい。(取材・文:中山治美)