両親とも薬物中毒…窃盗そして刑務所直行人生…救ってくれたのはザ・クラッシュ
レインダンス映画祭でワールド・プレミア上映されたドキュメンタリー映画『ブレイキング・ロックス』(原題)のアラン・マイルズ監督と出演したリオン・ウォーカーに話を聞いた。同プレミアはコンサート付きという珍しい形式で開催され、元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズなども登場したものだ。
本作は、服役中の受刑者にギターを贈り、更正の手助けをしようというイギリスのチャリティー、ジェイル・ギター・ドアーズを追ったもの。イギリスのロックミュージシャン、ビリー・ブラッグが、インスパイアされたザ・クラッシュの曲名を名称として始めたチャリティーだ。
「僕はラッキーだったよ」というウォーカーは、刑務所でギターを受け取り、音楽の才能を発揮、出所後、ブラッグの助けもあって、数あるイギリスの野外音楽祭の中でも横綱級のグラストンベリー・フェスティバルに出演している。両親ともヘロイン中毒で、子ども時代から窃盗などに明け暮れていたというウォーカーには、文字通りジェイル・ギター・ドアーズが、新しいドアを開いてくれたことになる。「僕だけじゃなくて、たくさんの人にドアを開いた活動だと思うよ」とウォーカー。マイルズ監督も「罰として投獄されているわけだけど、ただ閉じ込めるだけじゃなくて、更正させないといけない」と熱く語る。
マイルズ監督はザ・クラッシュによって映画制作に関わるようになった。その出会いについて「僕は消防士で、消防士のストライキを支援してくれたのが、ジョー(・ストラマー)だった。そこにミックも現れた。ミックとは、その後も連絡し合っていたんだ」と言う。ストの際のステージで、19年ぶりに元ザ・クラッシュの2人がそろって演奏したところを撮影したものが評判を呼び、消防士のかたわらドキュメンタリー映画を撮るようになり、今回、ブラッグから本作の監督を依頼されたもの。
2人は、これからアメリカでもチャリティーと映画上映を同時進行する予定ということだ。アメリカでは、今回のプレミアでも演奏した元MC5のウェイン・クレイマーがすでに同様のチャリティー活動を始めている。かつてドラッグ絡みの事件で服役したクレイマーに、ザ・クラッシュが捧げた曲が「ジェイル・ギター・ドアーズ」だったことを思うと、ザ・クラッシュによって導かれるように結集した人々とも言えそうだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)