山形国際ドキュメンタリー映画祭開会式にも、台風18号の影響直撃!
10月8日、隔年で開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭2009が台風の訪れとともに開幕した。本映画祭は、1989年にアジア初のドキュメンタリー映画祭としてスタートし、11回目となる今年は記念すべき20周年を迎えた。しかし台風18号の影響をもろに受けてしまい、その影響で多数のゲストが開会式に間に合わなかった。
本州を縦断し、各地で多くの被害をもたらした台風18号は映画祭をも襲った。山形県は直撃こそ逃れたものの、都心からの重要な足となる山形新幹線や空の便の欠航や遅延が相次いだ。その余波は18時開始の開会式にも及び、式途中に駆け込んで来た人もいたが、ゲスト席の3分の2は空席となってしまった。
司会を務めたシネマパーソナリティーの荒井幸博氏は「山形市制施行100周年記念事業として1989年にスタートした映画祭も20周年を迎えましたが、台風の手荒い祝福を受けるというのも、この映画祭らしいのではないでしょうか」と気の利いたコメントを聞かせ、本映画祭理事長田中哲氏のメッセージを代読した伊藤光一郎副理事長は「この時期の山形は米に酒にと味覚が満載ですが、特に日本酒のうまさは折り紙付き。くれぐれも翌日の映画観賞に響かないようお願いします」とどこか寂しさの漂う会場を盛り上げた。
その後、オープニング作品として2007年に死去した佐藤真監督の映画『阿賀の記憶』が上映された。本作は、スタッフ7人が新潟の阿賀野川沿いに暮らす水俣病患者と共同生活を送りながら、3年間にわたって記録したドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』の続編。両作品の撮影を担当した小林茂氏は「佐藤監督が亡くなった今、この映画の中に(監督が)溶け込んでしまったように思える。この映画のメッセージから、佐藤監督の心を感じてください」と言葉を詰まらせながら語り、会場から大きな拍手を浴びた。
本映画祭は今月15日まで開催。山形はアカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』のロケ地として知られ、先日も山形市にある東北芸術工科大学映像学科長を務める根岸吉太郎監督が映画『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』で第33回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞を受賞したばかり。山形からまた世界を揺るがす映画が発信されるのか、期待が集まっている。(取材・文:中山治美)