堺雅人「僕は平凡な人間」天才にあこがれた過去を激白
文豪太宰治と人気漫画家小畑健、そしてマッドハウスのコラボレーションによって生み出されたテレビアニメ「青い文学シリーズ 人間失格」で声優を務めた堺雅人に話を聞いた。
本作は昨年の太宰生誕100年にテレビ放送されたアニメーションで、昨年末には劇場公開されるなど、好評を博した作品だ。初出版から60年以上たった現在でも原作小説「人間失格」は広く人々に読まれ、新たなファンを増やし続けている。堺は「主人公を演じることができるワクワク感。そして企画自体の期待が大きかったのと、原作ファンから文句を言われないかという不安」が入り混じる中、OVA「戦闘妖精雪風」以来久々の主演声優挑戦となった。
原作小説との出会いは堺が中学生のときにさかのぼる。「太宰が小説の中で書く僕と、僕自身の僕がとても同じものとは思えなかったし、とにかく重くて暗い(笑)」とは当時の感想。そのファーストインパクトがあったからか、「太宰文学には苦手意識があって、敬遠していた」と明かす。しかし声優という機会を与えられ、再び「人間失格」に向き合った堺は「魅力は何かと考えるまでもなく、時の洗礼を受けても絶版になることなく、命を失っていないというのがすごい」と評する。
堺が声を務めたのは、ブルジョアの家庭に育ちながらも自分自身を恥じ、心中を企てるなど人間の生き方に苦悩する世捨て人のような主人公・葉蔵。「自分を持て余しているという部分にはとても共感できます。だからこそこの物語は残ってきたのだと思う。共感できない部分はそれ以外のすべてですね。こんな生き方は大変ですよ!」と太宰が生み出した重苦しい世界観を背負うのは、さすがにキツイ作業だったようだ。太宰や葉蔵とは対照的に、「僕は平凡な人間」と言い切る堺。「昔は中原中也とか、天才にあこがれていました」と俳優を志す前の意外な文学青年ぶりを明かし、自ら書いたという脚本の存在をにおわすも、「書いた瞬間、自分で『ないな……』と思ったので、内容は絶対に教えません!」とニヤリ。
そんな文学青年がくしくも声優として挑んだ太宰の「人間失格」。堺は「現在一線で活躍する一流のクリエイターが読み解く古典をぜひ観てほしい」と力強くアピール。声優堺としての見どころは「ない」と断言し、クリエイターたちの仕事を立てるなど、謙虚でナチュラルな人柄をうかがわせた。
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