製作費200万円の日本映画がロッテルダム国際映画祭で絶賛!
北野武、黒沢清両監督が教授を務める東京藝術大学大学院映像研究科出身の真利子哲也監督による映画『イエローキッド』が、第39回ロッテルダム国際映画祭の新鋭監督を集めたブライト・フューチャー部門で上映された。真利子監督も1月30日に行われた東京・ユーロスペースでの初日舞台あいさつを終えてすぐに飛行機に飛び乗り、現地入りした。
本作品は、ボクサー志望の青年がコミック「イエローキッド」のヒーローにあこがれ、やがて不遇な現実から逃避するかのように自身がヒーローに成り切って邪悪な者に牙を向けていくスリリングな人間ドラマ。大学院の終了制作作品として、製作費200万円、撮影期間2週間の意欲作。国際映画祭参加は、昨年のバンクーバー映画祭に続いて2回目。今後も香港国際映画祭への招待も決まり、世界が注目する存在となっている。
コミックを題材にしていることから上映会場には日本のポップカルチャーに興味がある若者たちが集まり、上映後のQ&Aでも「劇中のコミックはアメコミの『ヘルボーイ』を彷彿(ほうふつ)とさせました。また日本には同じボクシングを題材にした『はじめの一歩』という作品もありますが、何か影響を受けたコミックはありますか?」というマニアックな質問もあった。真利子監督が「僕は『ドラゴンボール』が好きで、主人公・孫悟空の必殺技かめはめ波がいつか使えるんじゃないかと思っていたこともありました。それがこの映画の主人公がイエローキッドになりたいという傾向に表れたんじゃないかと思います」と説明すると、観客は納得した様子だった。
本作品の上映は、いずれも客席が満席状態となる話題を呼んでいる。しかしそれよりも真利子監督は「ロッテルダムの劇場に到着早々、ハーモニー・コリン監督(新作映画『トラッシュ・ハンパーズ』(原題)で参加中)に会ったんですよ! 一緒に写真を撮らせてもらいました」とすっかり普通の映画少年に戻っていた。(取材・文:中山治美)