山田洋次監督、ネタばれして何が悪い!ラストがポスターになった『幸福の黄色いハンカチ』秘話
27日、北海道夕張市で開催中の、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010で、特別招待作品映画『イエロー・ハンカチーフ』の上映が行われ、山田洋次監督が登壇した。
1977年の山田洋次監督による映画『幸福の黄色いハンカチ』のアメリカ版リメイク作となる本作。オリジナル版が撮影された夕張での映画祭であることに敬意を表して、本映画祭が日本初上映となる。舞台に登壇した山田監督は「実は30年前からいろんなオファーがありました。映画『スモーク』のウェイン・ワン監督や、(映画『マイ・レフトフット』の)ジム・シェリダン監督なんかもプロデューサーと一緒に交渉しに来たんですが……。ハリウッドで1本の映画が出来るのは難しいんですね」と名監督たちの名前が次々とあがり、会場からは驚きの声があがっていた。
そして実際に作られた作品の感想を聞かれると「とてもまじめに作っている映画でうれしかったですね。強いて不満を言えば、僕の作品からもっと離れてもいいかなということくらい。それだけ尊重してくれたということでしょうが」とリメイク作品にも満足している様子だった。
ところで壇上には黄色いハンカチがなびいている写真が写っているオリジナル版のポスターが掲げられ、冗談混じりに「これはネタばれですよね」という話になった。すると山田監督は、当時の松竹の宣伝部からラストをバラしてはまずいのではないかという意見が出たことを明かし異論を唱えた。「意外でしたね。変なことを言うなと。サスペンスなどで、犯人が分かっちゃいけない映画なら、観る人のことを考えなければいけませんが、これはそういう種類の映画じゃないですからね」と力説。「ラストに黄色いハンカチが出てくる映画ですと人に説明したときに、すてきだな、観に行きたいなと思わせなきゃいけないんです。同じ映画を何度も観たくなるというのはそういうことなんですよ。結末を言うななんて、そういう安っぽいことを言うなと、ずいぶん議論になりました」と公開当時の宣伝方式についての裏話を明かしていた。
さらに山田監督は諭すように「だって寅さんってのは、マドンナにすぐ惚れてしまうどうしようもない男ですけど、最後は当然のようにふられてしまいます。これをネタばれしなかったらどうするんでしょう?」と解説。もちろんネタばれの解釈は人ぞれぞれであろうが、映画『男はつらいよ』など、何度も観たくなる映画を撮り続けてきた山田監督が投げかけた問題提起に、会場は熱心に耳を傾けていた。
本作は日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか主要6部門を独占し、1977年の映画賞を総なめにした日本映画史上に残る不朽の名作のリメイク作。北海道からアメリカ南部に舞台を移して、鮮やかによみがえる。ハリウッドの演技派ウィリアム・ハート、『トワイライト~初恋~』のヒロイン役でブレイクしたクリステン・スチュワートらの出演も話題となっている。
映画『イエロー・ハンカチーフ』は6月26日より東劇ほかにて全国公開(取材・文:壬生智裕)