沖縄返還問題は終わっていない!「密約」22年ぶりに緊急上映 国家の欺まんとは何か問う
政権交代後、沖縄基地移転問題が改めてクローズアップされ、当時アメリカと交わした返還密約が追及されているが、この密約を暴こうとした新聞記者が裁判に翻弄されていく様子を描きながら国家とは何かを問いかける実話に基づいたドラマが22年ぶりに劇場公開される。
1971年、毎日新聞の記者がアメリカと日本の間で交わされた沖縄返還にまつわる密約を暴こうと奔走。当時の外務省に勤める女性事務官を恋人にし、彼女を通じて国の機密書類である密約文章を手に入れたことから罪に問われ裁判になるが、重大な国の秘密を暴きながらも人々の関心が国家機密を愛人が漏洩したというスキャンダラスな方向に行ってしまい、問題の本質がうやむやなうちに「密約」は放置されてしまった。その裁判を傍聴していた作家・澤地久枝氏がこの事実に憤りを感じ、「密約 外務省機密漏洩事件」という1冊の本にまとめ上げた。
この本を基に今から32年前の1978年にテレビ朝日がテレビドラマとして映像化、当時民放では政治問題を扱うのはタブーとされていたが反響を呼び、日本テレビ大賞優秀賞を受賞している。しかし、その後1度も再放送されることはなかった。時を経て「密約問題」が人々の頭から忘れ去られそうになった10年後の1988年、一部の劇場で公開されるとともに、モスクワ国際映画祭でも上映され好評を博した。
それからさらに22年を経た今年、沖縄基地移転問題とともにクローズアップされた「密約」は、映画としても上映されることが決まった。35ミリで撮影されたフィルムは時を経ても色あせてはおらず、何十年も前の問題を今起こっているかのように浮き彫りにする。監督はドキュメンタリードラマ「深川通り魔殺人事件」などを撮った千野皓司監督で吉行和子が外務省の事務官絹子を演じている。美術は『復讐するは我にあり』の住谷昇能氏、音楽は『砂の器』で知られる故・管野光亮。テーマ曲をクロード・チアリが演奏している。
映画『密約-外務省機密漏洩事件』は4月10日、銀座シネパトス、新宿武蔵野館他全国公開