存続の危機だったこども映画教室が今年は無事に開催!明日の映画界担う子どもたちに期待!
金沢コミュニティシネマと映画館「シネモンド」が企画した「こども映画教室」が3月20日から22日まで、金沢21世紀美術館(金沢市)で行われた。
同映画教室は小学生に映画に親しんでもらおうと2004年にスタート。毎年春には著名監督を招いての、ストーリー作りから撮影、上映までをすべて子どもたちが主導で行う映画製作体験を実施。今年は、東京造形大学の学長でもある諏訪敦彦監督が講師となり、自身の映画製作スタイルである即興演出を課題にした。しかし初日にお手本として諏訪監督の最新作『ユキとニナ』を観賞してもらうと、子どもたちから「わかんな~い」「難しかった」の声が続出し、諏訪監督も思わず苦笑い。日本人の母とフランス人の父を持つパリ在住のユキが、両親の離婚で日本に戻らなければならない複雑な大人の事情や、パリの森を抜けたら日本だったという幻想的なシーンの登場し、子どもたちが混乱してしまったらしい。
しかし諏訪監督が「諏訪さんもわからないんです。なぜならこの映画は、ユキを演じた当時8歳の女の子が、自分だったらどうする? と考えながら作った映画だからです」と答えると子どもたちから驚きの声が上がり、一気に諏訪監督と子どもたちの距離が縮まった。
今年の物語のテーマは「もしも~だったら」。4班に分かれてアイデアを出してもらうと、「もしも学校にヘンな転校生が来たら」「もしも子どもたちだけの世界があったら」「もしも自分の大切な木を宇宙人に切られたら」「もしも忍者で、しかも超能力を持っていたら」とユニークな案ばかり。製作途中は大人顔負けの「言葉じゃなく動きで表現して観客にわかるようじゃなきゃ、映画を作る意味がないだろ!」の名言が飛び出したり、「なぜ忍者同士が戦わなければいけないのか。その理由を考えないと」など、何時間も激論を展開。
また黄緑色のお面と紙を巻き付けた斬新な宇宙人の登場に、同美術館に来館した観光客たちの爆笑を誘いつつ、それぞれ約10分間の短編を完成させた。映画を観た諏訪監督は「子どもたちが創造したこと、今、生きている瞬間が全部映画に映っています。それはほかの人には絶対作れない作品です。諏訪さんも負けました」と完敗宣言。続いて「疲労困憊(こんぱい)したけど、映画のことを改めて考える良い体験になった」と語り、子どもたちから良い刺激を受けたようだ。(取材・文:中山治美)