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女性器切除が慣習の実在の国から、娘の女性器切除をさせないため亡命『ミセス・グンドス・ドーター』

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ジャネット・ゴールドウォーター監督(左)とバーバラ・アティ監督(右)
ジャネット・ゴールドウォーター監督(左)とバーバラ・アティ監督(右) - Photo:Yukari Yamaguchi

 現地時間3月22日夜、ロンドンで開催中のヒューマン・ライト・ワッチ映画祭で、ドキュメンタリー映画『ミセス・グンドス・ドーター』(原題)の2度目の上映が行われた。本映画祭での上映がイギリスでのお披露目となる本作、アメリカからやってきた共同監督のジャネット・ゴールドウォーターとバーバラ・アティが質疑応答した。

 本作は、アフリカのマリ共和国から、アメリカのフィラデルフィアに逃れてきたグンドス夫人を追ったもの。夫人の渡米理由は、娘の女性器切除を避けるため。マリでは一般的に行われている慣習で、夫人自身も記憶がないほど幼いころに切除された。ひどい痛みを伴うという切除で、物心ついてからは、切除後の子どもたちが泣き叫ぶ声がトラウマになったという。

 本作ではマリの様子も映し出される。マリの男たちは仕事を求めて何年も家を空けて旅することがあるため、留守中、妻に浮気させないためにも女性器切除が有効という男性支配が、宗教などとも結びつけられた慣習だということも明かされる。村ごとに子どもたちをまとめて数十人も、剃刀で次々切り落としていくという荒っぽさで、出血多量や感染から死に至るケースさえあるという。

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 マリに限らず、アフリカ各地で行われている慣習で、年間約三百万人、換算すると毎日約八千人ずつ切除されているというショッキングな数字が示される本作だが、「映画にとりかかった最初のころの統計ではマリの女性の92パーセントが切除されていましたが、最新の統計では85パーセントです。少しずつ、減少には向かっています」とアティ監督はマリ国内でも女性の人権意識が芽生えつつあることを説明した。

 本作で問題としていることの一つが亡命認定。最終的には認定が下りるグンドス夫人だが、簡単ではない。ケニア出身だという若い女性観客が「ケニアでも同じような状況です。もっと認定がスムーズに下りるよう、こういう問題が広く理解されるべきだわ」と強い調子で訴える一幕もあった。アフリカからの移民も多いイギリスでも、遠い問題ではないようだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)

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