映画『鉄男』はハリウッドの提案から!塚本晋也監督がその製作意図を明かす!
現在ニューヨークで開催されているTribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)に映画『鉄男 THE BULLET MAN』を出品した塚本晋也監督が、現地で本作ついて語ってくれた。
映画『鉄男 THE BULLET MAN』は、日本人の妻ゆり子と息子トムと幸せな生活を送っていたアメリカ人の夫アンソニーが主人公。ある日突然何者かにトムを殺されたアンソニーは、事件の真相を追っていくうちに、解剖学者の父ライドが事件に関与していることを知る。怒りに震えたアンソニーの体が、鋼鉄の銃器に変ぼうしていくというストーリーだ。
本作『鉄男 THE BULLET MAN』は前2作とは異なり、全編英語で製作されている。その製作意図は、「1992年の『鉄男 II BODY HAMMER』の後に、『鉄男 TETSUO』のアメリカ版を制作しないかということをハリウッドの人たちに言われ、そのときにやりたいと思ったんです。それをずっとモチベーションとして持っていました。ただ本作は、全編英語ですが、日本で撮影していてるため、完全なハリウッド版とは言えません。それでも、自分としては理想的なアメリカ版ができたと思っています」とハリウッドからの打診がきっかけであったことを明かした。
塚本監督が「アメリカ版」と語る本作の舞台がなぜニューヨークではなく、東京なのかについては、「911のテロ事件の前、つまりビルが壊れる前ならニューヨークでも良かったんです。それは、あまりに機能として進み過ぎた都市、仮想現実の世界になっているようなニューヨークの都市であるうちは、鉄男が現れて都市を壊しても良かったのですが、すでに壊れたビルを、再び壊していくというのは、どこか不謹慎な感じがしたんですよ(笑)。それに、この映画の主人公はアメリカ人ですが、現在平和ボケして1番壊さなければいけない都市は、東京だと思ったからでもあるんです」と東京に喝を入れられてしまった。
また、映画内で塚本監督が演じる役ザ・ガイ(男)は、「平和ボケをしたすべての人を目覚めさせる」と主張しているが、これについて塚本監督は「主に日本の若い人に向けたものですが、平和であることは良いのですが、その中で平和のありがたみさえわからなくなっている状態、それが当たり前になっている状態があります。今、戦地を体験した人は80歳以上になっているんですよ。こういう人たちが、これからいなくなると、生きていることのありがたみを伝える人たちがいなくなります。日本は平和ですが、日本の周りで起きていることをないがしろにして、平和に甘んじちゃっていると怖いよという事を伝えたかったんです」と付け足した。
最後に塚本監督は、「去年行われたヴェネチア映画祭のころの作品と違い、思いっきり直しているんですよ! それに、ナイン・インチ・ネイルズの曲がエンディングに加わっています。彼らが持つ鉄的なコンセプトがうまく合体しているんです。そんな作品がここトライベッカ映画祭で初上映となるので、すごくうれしいですね」と本作を一押しした。
あの映画『鉄男 TETSUO』から20年、映画『鉄男 THE BULLET MAN』は観客を新たな世界へ誘ってくれることだろう。アメリカ人の反応も気になるところだ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)
映画『鉄男 THE BULLET MAN』は5月22日よりシネマライズほかにて全国公開