これが本当のアフガン戦争!実際の戦場で兵士は何を考えている?
今年のサンダンス映画祭のドキュメンタリー部門グランプリを獲得した映画『レストレポ/ Restrepo』(原題)のティム・ヘザーリントン監督とセバスチャン・ユンガー監督が、2001年から続くアフガン戦争を今扱うことの意味について語ってくれた。
映画『レストレポ/ Restrepo』(原題)は、アフガニスタンの中でも最も危険といわれるコランガル渓谷での戦闘に従事したアメリカ軍を密着取材したドキュメンタリー作品。銃撃戦が繰り返される中、毎日を生きている兵士の姿をしっかりと描いた力作だ。
ジャーナリストとして開戦直後のアフガニスタンを訪れたことがあるというユンガー監督は、この映画はアフガン戦争を描いたものではないと言い切った。「僕たちは、一人の兵士が戦場でどのようにしているのかを伝えたかったんだ。だから、戦争の全体像を描こうとはしていない。実際に戦っている兵士には、自分の参加している戦争がどんなものかを考えている余裕はないからね」と現地の兵士の目線で撮影したことを強調した。
本作では、殺された仲間の姿を目にする兵士などもカメラでとらえられており、この本物の映像を撮影するためにヘザーリントン監督は銃弾の飛び交う中でカメラを回し続けた。それもすべては、実際の戦場での兵士の姿を伝えるためだ。アフガン戦争には一般人を巻き込んだ爆撃など悪いイメージがつきまとうが、「誤解が多いのは確かだよ。実際には、アフガニスタンの復興と治安維持にも貢献しているんだから」とユンガー監督は説明した。
また、この作品で扱われている大きなテーマの一つには帰還兵がある。試写会を行った際には、作品に登場する兵士の母親が会いに来てくれたらしい。帰還後、まるで別人のようになってしまったという兵士の母親は「この映画を観たことで、息子の置かれた状況が少しでも理解できてよかった」と監督たちに感謝の言葉を述べたという。ヘザーリントン監督は「帰還兵だけが状況の変化に対応していくのではなく、僕らや家族たちも帰還兵を理解するための一歩を踏み出さなければいけないね」とつい見落としがちな点を指摘した。
テレビや新聞などのメディアが発達しているためにどうしても生の感覚には疎くなってしまいがちな昨今。だからこそ本作を観て、新たな視点からアフガン戦争を見直してみるのもいいかもしれない。(取材・文:細木信宏 Nobuhiro Hosoki)