アニメのアカデミー賞アニー賞受賞の上杉忠弘、受賞して一番の驚きは「実家の両親に取材が来ていたこと」
映画『コララインとボタンの魔女 3D』(ヘンリー・セリック監督)でコンセプトアートを手掛け、第37回アニー賞最優秀美術賞を受賞した日本人イラストレーターの上杉忠弘が本作のブルーレイ&DVD発売を前に、単独取材に応じてくれた。
上杉は日本在住のイラストレーターで、企業広告、パッケージ、映画ポスター、CDジャケットなど幅広く活躍している。50~60年代の米国アニメーションに影響を受けたという、独自の色彩と質感を持つエレガントなタッチが国内外で高く評価されており、2004年ごろ、上杉とセリック監督が出会うきっかけを作ったのも、ピクサーの絵コンテアーティストだった。
そもそもコンセプトアートとは、スタッフ、キャストが世界観を共有するための「指針であり、たたき台」(上杉談)であり、キャラクター、美術、衣装などのイマジネーションを膨らませる源泉として、非常に重要な役割といえる。本作の製作が正式決定していない段階から、セリック監督がさまざまなお題を出し、それに答える形で上杉は作業に取り組んだ。「普段は平面的なグラフィックを手掛けているので、いざ立体になったとき、どんなキャラクターに見えるのか。多少勝手が違ったし、試行錯誤しました」と苦労もあったそうだ。
ちなみに、セリック監督は「わたしはときには独裁者」と完ぺき主義者の側面ものぞかせるが、上杉のコンセプトアートに関して、セリック監督からやり直しや注文が入ることはなかった。「日本で作業したのが良かったと思います。もし監督のそばで直接的なやりとりをしていたら、また違った仕上がりになったはず」と上杉は作業工程を振り返った。
上杉にとって、アニメーション製作への参加は今回が初めて。アニー賞を受賞するとはまったく思っていなかったといい、最初は授賞式も欠席する予定だった。「家内同伴なら行きます、とかワガママを言えば『来なくていい』って言われると思ったんですけど。仕方ないので(笑)観光気分で行ってきました」と笑って語るが、結果はご承知の通り。日本人初となるアニー賞美術賞受賞の快挙を成し遂げることに。受賞スピーチも用意していなかったので、ステージ上では英語と日本語混合で喜びを語った。「でも一番驚いたのは、帰国する前に、実家(宮崎県延岡市)に取材が来ていたこと。どうやって探し当てたのか。ちょっと怖いなって(笑)」と笑顔で締めくくった。
映画『コララインとボタンの魔女 3D』ブルーレイ(3Dプレミアム・エディション、税込み:6,090円)とDVD(3Dプレミアム・エディション、税込み:4,935円)は8月6日リリース、スペシャル・エディションも同時発売
発売元:ギャガ、販売元:ハピネット