世界的大不況を吹き飛ばせ!アカデミー賞外国語映画賞『おくりびと』に続く『瞳の奥の秘密』の秘密とは?
映画『おくりびと』がアカデミー賞を受賞したことで、注目を浴びたアカデミー賞外国語映画賞で、翌年に映画『瞳の奥の秘密』が受賞したのにはある秘密が隠されていた。作品賞や監督賞など主要部門とは一味違う、外国語映画賞受賞作の面白みとは?
ここ数年映画『善き人のためのソナタ』や、映画『ヒトラーの贋札』などドイツやオーストリア作品がアカデミー賞外国語映画賞を受賞してきたが、昨年は前評判の高かった作品ではなく日本の『おくりびと』が見事その賞をゲット。ドイツ語圏の映画には東西分裂やナチスによるホロコーストなど歴史的事実に基づく作品が多く見られる反面、ある種きまじめな硬さも否めない。その後にうまく滑り込んだのが『おくりびと』のような心温まるドラマで、その翌年には人類最大のテーマ「愛」を追求した『瞳の奥の秘密』がその栄誉に輝いたのも納得だ。
アカデミー賞はハリウッドの映画関係者が選考を行うことからもわかるように、アメリカの情勢によって大きく賞の行方が左右される。同賞が世界三大映画祭と呼ばれるカンヌ国際映画祭や、ヴェネチア国際映画祭など、芸術性や作品の完成度を重視する映画祭とは一線を画しているのも事実だ。ただ作品賞などとは違い、外国語映画賞は必ずしもアメリカ国内で上映される必要はなく、アメリカナイズされた映画でなくてもいいのが強みでもある。
長引く世界的大不況が続く昨今、その暗いムードを吹き飛ばすべく、ある意味普遍的な愛というテーマを真摯(しんし)に取り上げたこの『瞳の奥の秘密』が、本年度の栄えあるアカデミー賞を受賞したのもうなずける。この作品は、25年前に失ったと思っていた愛を取り戻そうともがく男の物語でもあり、陰惨な殺人事件で妻を失った男の喪失の物語でもある。そこには人種や国や年齢や性別などすべての垣根を軽々と越え、われわれの魂に訴える人生の教訓がひそんでいるだけでなく、アカデミー賞外国語映画賞という栄誉に輝いただけの理由もひそんでいるのだ。
映画『瞳の奥の秘密』は8月14日よりTOHOシネマズ シャンテにて公開