衝撃の実験作!全編94分、棺桶の中での出来事を描いた映画が評判!【トロント映画祭】
トロント映画祭で上映された、ライアン・レイノルズ主演の『リミット』が話題になっている。映画の全編94分間一度もカメラが主人公が閉じこめられた棺桶の中から出ることがないのだ。レイノルズ演じる主人公は、イラクの建築現場でトラックの運転手をするアメリカ市民。気付いたとき(映画が始まったとき)には、棺桶の中に入れられ、土に埋められている。カメラは、その中で主人公が携帯電話とライターと懐中電灯を使って脱出しようと四苦八苦するところを撮影し続けるのだ。
脚本家のクリス・スパーリングは、当初予算5,000ドルしかなかったため、場所も移動せず、役者もひとりで作れる低予算の作品がどうやったら作れるかを考えてこのアイデアを思いついたのだそう。そして本来は自分で監督するつもりだったのだが、脚本がめぐりめぐってハリウッドに届き、ライアン・レイノルズが主役に決定するという快挙に。そこで、予算が200万ドルに増え、監督も、スペイン人のロドリゴ・コルテスに決定した。「最初脚本を読んだときはこんな作品映画にするのは不可能だと思った。でもだからこそやってみたいと思ったんだ」とコルテス監督は語っていた。
レイノルズは「リハーサルはなしですぐに撮りたい」と言ったそうだが、そもそも予算が少ないため撮影はわずか17日間で行われたそうだ。
「肉体的にも精神的にもボロボロになった」とレイノルズ。「今後一生ほかの映画の撮影がどんなに過酷でも絶対に文句は言わないと思う。これ以上過酷な撮影はないと思うから。事実、『グリーン・ランタン』の撮影で、つり下げられて、何度も投げられたりしたんだけど、『もう1回!』と何度も言ったんだ。なぜなら、17日間、重荷を背負った気分で、箱に入るのに比べたらどんな苦労もマシだから。とにかくこの撮影は本当に大変だった」。
監督は、この撮影に7つの棺桶を作って挑んだということ。94分間棺桶から一度も出ないし、役者もライアン以外出演しないこの映画は、しかし非常にエンターテイニングであり、トロント映画祭での評判は上々だ。すでに、ヒッチコックと比べる批評家もいるほど。実は、トロント映画祭では、ダニー・ボイル監督、ジェームス・フランコ主演の青年が、登山中に岩に腕を挟まれ、そこから脱出するという実話を基にした映画『127 HOURS』(原題)も上映され、これも大変好評を得ている。『リミット』のほうがより限られた条件における作品ではあるが、男が一人で脱出を計ろうとするという点では偶然にも似た作品が、評判になっていた。(取材・文:中村明美)