谷村美月、「愛はよくわからない」と素直な気持ち吐露!『海炭市叙景』南果歩ら、愛について激白!
第23回東京国際映画祭のコンペティション出品作品である映画『海炭市叙景』より、出演者の南果歩、谷村美月、竹原ピストル、そして熊切和嘉監督が、ひそかに抱いていた嫉妬(しっと)心や愛について、笑いに包まれながら撮影秘話を語ってくれた。
『海炭市叙景』は、5度芥川賞候補に挙がり村上春樹らと並び評されながらも賞に恵まれず、41歳で自ら命を絶った作家・佐藤泰志の未完の遺作を映画化。佐藤の故郷でもある函館をモデルにした架空の町「海炭市」を舞台に、そこに生きる人々のどこか欠落した日常を、美しい映像と共にオムニバス仕立てで描き上げた作品だ。
兄弟愛や家族愛、そして人間の愛に訴え掛ける一面も見せる本作で、それぞれの愛についての思いを聞くと、谷村は「愛とか何かよくわからないですね(笑)。でも、わたし人がすごく好きなんです。自分よりも人を見て学ぶことがあるので、人間が大好きです」とこちらが面食らうほどの率直さで語ってくれた。そして竹原も、「……頑張って考えたんですけど、ナンーっにも出てこないんです!」と兄妹を演じた谷村と息の合った(?)答えが。
小林薫と冷めた夫婦を演じた南は、「愛は形を変えていくものだと思う。たとえ離れていても、親子・兄弟の愛は切っても切れないものがあり、夫婦の愛は冷めてしまうことも含めて、もっともっと変化しやすいものだと思う」と南ならではの深い思いを明かしてくれた。
また、原作にある18の短編の中から、監督が「バランスとキャラクターの幅を広げるように考えた」という五つを選んで映像化され、南、谷村と竹原がそれぞれのエピソードを演じている本作。その地に生きる人のありのままの姿を描くことを追求した熊切監督について、「監督は寄り添う人ですね。キャストだけでなく、スタッフにも寄り添う。わたしの撮影最終日に、翌日撮影のエピソード出演者である加瀬亮さんたちがはす向かいに座っていたら、監督はもう向こうに寄り添い始めたんです(笑)。それがすごく寂しかった(笑)」と南が意外な思いを打ち明けると、谷村と竹原も笑顔で監督の“寄り添い感”に同調! 特に竹原は「南さんと同じ嫉妬(しっと)を常に抱いていた!」と監督が誰に対しても楽しそうに接し、撮影している姿を見てジェラシーを覚えたそうだ。
オーディションで選ばれ出演した人も含めて、函館市民の協力なくしては成立しなかったといっても過言ではない本作。キャストが語る監督の人柄も相まってか、近年の邦画大作とは一線を画すリアリティーと人間味が、切なくも温かくにじみ出ている。そのリアリティーの一端を見事に担った谷村が「こういう作品のために普段から家事をやっているところもある」と語る通り、全編にわたって全出演者が、本当にそこで生活している人々に見えてくる。これから寒くなる季節に、心をしっとりとさせたい人にはぴったりの作品だ。
映画『海炭市叙景』は11月27日より函館にて先行公開、12月上旬より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開