生涯AV監督宣言!ローマ映画祭でAV界の巨匠・代々木忠監督の半生上映!加藤鷹の失神に爆笑!激怒の女性も
“ヨヨチュウ”の愛称で知られるAV界の巨匠・代々木忠監督の半生を追ったドキュメンタリー『YOYOCHU Sexと代々木忠の世界』(石岡正人監督)が現地時間1日、イタリアで開催中の第5回ローマ国際映画祭EXTRA部門で上映され、現地入りした代々木監督と石岡監督がレッドカーペットを歩いた。代々木監督は「映画祭とは無縁のところで活動してきたのに、たまたま作品がフォーカスされてこうしてローマまで来るとは。映画人として一回は(映画祭のような晴れやかな場を)経験したいと思っていたのでうれしいですね」と頬を緩ませた。
今年で72歳となった代々木監督は、華道家、元ヤクザ、そしてピンク映画の助監督を経てAV業界に入ったという異色の経歴の持ち主。以降、「ザ・オナニー」シリーズや、愛染恭子の本番生撮りシリーズ、性感マッサージやチャネリングによる女性のオーガズムを追究した作品を発表し、それらはAVの枠を超えて日本の風俗史を彩っている。本作はAV界の生き証人とも言える代々木監督を追うことで、図らずしも代々木監督が巻き込まれてしまった1972年の日活ロマンポルノ裁判や、猟奇的事件が起こるたびに取り沙汰される漫画や映画の影響といった社会問題にも触れており、今後も続くであろう性描写などの規制巡る論争を考える上でも貴重な記録となっている。ナレーションを田口トモロヲが務め、まさにNHKでは企画不可能な、AVに人生を懸けた男の「プロジェクトX」だ。
イタリアはアモーレ(愛)の国と呼ばれるように、性に関する作品には興味津々のようで2回の上映はいずれも大盛況。AV界のカリスマ・加藤鷹がオーガズムを得た末に失神する代々木作品のワンシーンが流れると、観客からは笑いと拍手喝采が起こった。その一方で男の欲求を満足させる通常のAVとは異なり、カメラの前で俳優たちが心をさらけ出すまで追い込んでいく代々木監督の過激な手法に衝撃を受けたのか、「こんな映画、面白くないわよッ!」と怒鳴って会場を出ていった女性もおり、賛否両論を巻き起こしている。
もっとも代々木監督は、そんなイタリア人のリアルな反応を肌で感じられることを楽しんでいるようで「その女性は心が解放されていないのでしょう。だから僕の作品で女性たちがオーガズムを得て涙するような場面を見せられて困惑し、心の整理が付かなくなったんだと思います。強烈な体験だったんでしょうね」と余裕の表情。石岡監督も「上映後、代々木監督にサインを求めに来た女性たちもいる。分かってくれた人もいると思う」と語った。
性への探求心が人間の心の問題にまで踏み込んでいってしまった代々木監督は、1997年に「多重人格そして性」を発表したあたりから自分の精神的負担が大きくなり、ついにはうつ病になったことも公表している。石岡監督から本作の企画を引き受けたのも、病に至った半生を振り返ると同時に、家に篭もりがちだった自分を再び奮い立たせたいという気持ちがあったのだという。ローマで数々の刺激を受けた代々木監督は「帰国したらすぐに新作に撮りかからないと」と、生涯AV監督としての決意を新たにしていた。
なお、同作品はドキュメンタリーのコンペティション部門対象作品となっており、受賞結果は現地時間11月5日に発表される。(取材・文:中山治美)
映画『YOYOCHU Sexと代々木忠の世界』は2011年1月下旬より銀座シネパトスほか全国公開