激しい性描写・同性愛で中国では上映禁止の問題作!禁断の中国映画がついに日本上陸!
5年間の映画制作・上映禁止処分を中国当局から受けたロウ・イエ監督がそれを無視して制作した映画『スプリング・フィーバー』がとうとう日本に上陸する。激しい性描写や中国ではタブーになっている同性愛を扱った本作は、第62回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した監督の新たな代表作だ
2006年の映画『天安門、恋人たち』は、天安門事件と激しい性描写を描いたためにカンヌ国際映画祭での上映禁止を言い渡された。だが、中国当局の決定を無視してイエ監督は上映を決行し、その結果、5年間の映画製作・上映禁止処分という監督生命を断たれたも同然の状態となった。それでもあきらめかった監督が、禁止中にもかかわらず、海外の配給会社の協力を得て制作した本作は、前作を上回る問題作だ。
中国国内での映画製作を禁止されたイエ監督は、本作で家庭用デジタルビデオを用いたゲリラ的手法で、中国国内での撮影を敢行。のみならず、中国内ではタブーとされている同性愛描写や前作がかわいく思えるほどの生々しい性描写も取り込むなど、中国からの処分を一顧だにしない制作姿勢を貫いた。中国内で制作された映画には検閲という束縛があるが、今回はそもそも中国での上映が許可されていないため、検閲も入りようがない。そのために、かえって自由な映画制作が行われたようだ。
そのことを反映してか、本作では、これまで扱ってきた歴史に翻弄(ほんろう)される個人ではなく、日常の営みの中で愛に狂わされる5人の男女を描いた。イエ監督自身、「この映画は人と人との間の身近な日常を描いた、純粋なラブストーリーなんです」と語るように、ここで切り取られたのは、中国での日常の風景だ。例えば、画面に映されているのは実際に存在するゲイのショーパブであり、その場面の出演者も実際にそこで働いている人々であるというふうに、この映画が描いているのは、現在の中国のありのままの姿でもある。
本作の制作にあたって、イエ監督は「監督は映画を撮るのが仕事。たとえ政府であっても監督という職業を奪う権利はない」というコメントを寄せた。イエ監督が自身の監督生命を懸けてまで作り上げた本作は、昨年のカンヌ国際映画祭で、最高賞となるパルム・ドールは惜しくも逃したものの、見事脚本賞を受賞し、国際的な評価を獲得した。
映画『スプリング・フィーバー』は11月6日よりシネマライズほか全国公開