自らの腕を切り落として生還した登山家を演じたジェームズ・フランコ「痛みは本物!」
現地時間10月28日夜、第54回ロンドン映画祭で開催されたヨーロッパ・プレミアに先立ちダニー・ボイル監督映画『127アワーズ/127Hours』(原題)の会見が行われた。本作は一昨年の『スラムドッグ$ミリオネア』に続き、再度、同映画祭のクロージングを飾るボイル作品でもある。会見には、ボイル監督、プロデューサーのクリスチャン・コルソン、脚本のサイモン・ボーフォイ、主演のジェームズ・フランコが登場した。
本作は、登山家アーロン・ラルストンがキャニオンで岩に挟まれた腕を切り落として生還した実話を基にしたもの。ボイル監督は「痛み、不安、そして人生が戻ってくる過程についてジェームズに話すのに、出産を例にしたんだよ。僕自身が目撃者だからね。最初の子どもが生まれた時のことは忘れられない。それをジェームズに話したんだ」と本作の奥にある力強さ、明るさの秘密とも思える部分を明かした。
コルソンは「ロケではグランドキャニオン近くにキャンプを張ってヘリコプターも使った」と現地でのスペクタクルのある映像の部分を説明。ボーフォイも「実際に義手をつけたラルストンがいるんだ。起こったことを再現するのに責任を感じた」と語る。だが、そこはボイル監督、渇きをウォーターボトルの中にカメラを置いた映像で見せたかと思うと、切り取る腕の内側にまでもぐりこみ、弱っていくラルストンが見る幻覚のシーンを挟んだりのチャレンジのある映像と、お得意の今を感じさせる音楽を使い、見たラルストン本人が「エクスタシー」の言葉で表現したという映像と音の世界を繰り広げている。
「撮影翌日、腕は紫になってた。だから、疲労と痛みは演技じゃなくて、ほんとうだよ」と笑うフランコも、ほとんどが岩場での1人芝居で注意をそらせない演技を見せている。腕を挟まれたまま持参のレコーダーで自分を記録するシーンについてフランコが「アーロンにその時の記録を見せてもらったんだ。そこには純粋な行為があった。自分の死を許容している男がいるんだ。自己憐憫なんかはなくて、シンプルで個人的で、でも品格を感じさせる家族へのメッセージを送っている。アーロンには身体的な強さもあるけれど、家族との強い絆、強い愛がある。それは演じるうえで大きな助けになった」と語るように、生々しい腕の切り落としシーンがあるにもかかわらず、人間賛歌のフィールグッドムービーになっている。
主人公と同じ状況に置かれたら腕を切り落とすかに、ボイル監督が「みんながそうすると思う。もしナイフがなければ噛み切ってでもやるだろう。ひどいことのようだが、動物なら、いつでもしていることだ」と言うと、ボーフォイも「がんばるよ!」と同意、フランコも「どちらにしろ、あの時点では腕はもう死んでしまっているしね」と、衝撃映像への驚きで、うっかり見過ごしそうなポイントも指摘してくれた。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)