カメレオン女優、メリル・ストリープはなぜ愛されるのか?
アカデミー賞最多を誇る16回のノミネート、そして2度もその栄冠に輝いたハリウッド随一の名女優メリル・ストリープは、なぜこれほどまでに愛されるのか。40歳を過ぎた女優にはオファーが激減するといわれるハリウッドで、60歳代になった現在もなお第一線で活躍するメリルの魅力を改めて探ってみた。
ハリウッドの生きる伝説、メリルの最大の魅力はその底知れない演技力だ。アカデミー賞主演女優賞作品となった映画『ソフィーの選択』ではポーランドなまりの英語を完ぺきにマスターしながら、やせ細った姿でヒロインのソフィーに成り切り、観る者の心を震わせずにはおかない大熱演を見せた。さらには、映画『アダプテーション』では、メリルのイメージとは正反対のあばずれな中年女性を演じてみせるなど、40歳どころか50歳以後も難しい役どころに果敢にチャレンジし続けている。ほかにも映画『マンマ・ミーア!』ではパワフルな歌と踊りを披露し、映画『ジュリー&ジュリア』ではテレビで人気の料理研究家ジュリア・チャイルドにふんしたそっくりな演技がアメリカで大絶賛とされた。
そんな誰もが認める演技派女優メリルの演じる女性たちもまた非常に興味深く、特に「強い女性像」はメリルの真骨頂ともいえるだろう。映画『クレイマー、クレイマー』では家庭の外に自分の居場所を求めて模索する役どころで、1970年代のウーマンリブ運動の影響を感じさせる若い女性を好演。ほかにも、1960年代の激動する社会において古い価値観に縛られた厳格なシスターを演じた『ダウト ~あるカトリック学校で~』など、メリルが演じる強い女性像もさまざまだ。各時代で強く生きた女性にメリルが息を吹き込むことによって、人々はメリルの役に共感せずにはいられなくなるのだ。
その人気はもちろん、メリルは多くの尊敬も集めている。デビューして間もなく映画『ディア・ハンター』でアカデミー賞助演女優賞候補となり、映画『クレイマー、クレイマー』で初のオスカーを獲得するも、スターとしておごることなく演技に磨きをかけてきた。家族を何よりも優先させ、プライベートが話題になることを避けながら、いったん選んだ仕事のためには全力を注いで役に成り切る。そんなプロ根性もメリルの愛される理由の一つなのだ。
もはや「演じられない役などないのでは」という印象のメリルだが、次に演じるのもやっぱり強い女! 1980年代にイギリスの首相を務めた「鉄の女」こと、マーガレット・サッチャーを演じることになるようだ。これまでの変幻自在なメリルを見れば、サッチャーの演技にも期待できるだろう。
映画『ジュリー&ジュリア』は12月11日よる6:50よりWOWOWにて放送