マイケル・ムーアが激オシのオスカー候補のドキュメンタリー!熱血弁護士の闘い描く
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『華氏911』のマイケル・ムーア監督が、推薦する話題のドキュメンタリー作品『ウィリアム・クンスラー:ディスタービング・ジ・ユニバース(原題)/ William Kunstler : Disturbing the Universe』について、監督のエミリー・クンスラーと共に語った。
同作は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、マルコムX、シカゴ・セブンなどを顧客にもっていた弁護士のウィリアム・クンスラーを描いたドキュメンタリー作品。ウィリアムは公民権運動に積極的に活動した弁護士だったが、世間を騒がせた大きな犯罪事件も扱った急進派の弁護士でもあった。ただ、言論の自由に関しては徹底した追求姿勢を見せていた人物である。
マイケル・ムーアがこの作品と出会ったのは1年半前とのこと。「僕が主催するミシガン州のトラバース・シティ映画祭でこの映画を観て以来、今日で3回目の鑑賞となるが、毎回観るたびに感傷的になってしまう映画なんだ。この映画は、人間の優しさと素晴らしさを描いている」と評価する。
監督のエミリーは、製作意図について「父から、あるレッスンを受けたからなの。それは、わたしと妹のサラ(共同監督している)が父から公民権運動は過去に成功した出来事ではなく、今も格闘している問題であるということだったの。だから、わたしたちはそういった人権問題を、父の言葉を借りて訴える必要があると思ってこの映画を製作することになったの」と明かした。
黒人、テロリストやマフィアのボスまで弁護していたウィリアムは、人権を保護している点では一貫性があったのでは、との質問に「無罪か有罪かは、わたしとサラにとって問題ではなかったの。なぜならわたしたちは、どんな人物であろうが弁護士が必要であるということは父に育てられ、十分にわかっていたから。ただ、そういう世間で話題となる事件の弁護士が、自分の父であったことが問題だったの。特に、誰かが父を訴訟の弁護人として依頼するのではなく、父が自ら引き受けたい事件を選び、弁護をしていたからなの。父にそういった選択権があったから、わたしたちは彼に振り回され、他の人たちにも批判されてしまい、随分困難な生活を送ったこともあったわ……。ただそんな中で、もし彼に一貫性があるとしたら、政府の横暴な行政に対しては常に一貫して否定してきたことだわね。とは言え、弁護士に成りたてのころは借金もあって、父は自分の利益の追求のために、人権を第一には考えていなかったようだわ」とエミリーは子どものころは、父に対して否定的な見方をしていたそうだが、徐々に尊敬する存在に変わっていったことを語った。
エミリーの妹サラは、この日風邪でイベントに参加できず、マイケル・ムーアも司会者としてこのイベントに参加したため、あまり返答する機会がなかったが、映画の完成度は観客から高く評価されていた。
エミリーとサラの次回作は、「ユダヤのヒトラー」と恐れられたラビ・メイア・カハネを暗殺した男、エル・サイード・ノサイルとその息子を描いた作品を制作することになっている。現在、『ウィリアム・クンスラー:ディスタービング・ジ・ユニバース(原題) / William Kunstler : Disturbing the Universe』は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門の審査対象候補となる15作品に選ばれている。ちなみに、そのアカデミー賞候補のノミネーションは来年の1月25日に発表され、授賞式はハリウッドのコダック・シアターにて来年の2月27日に行われる予定だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)