林隆三、石巻ロケを行った作品の出演料を全額寄付 先行上映予定だった劇場も跡形も無く
東日本大震災で甚大な被害を受けた、宮城県石巻市をメインロケ地とする映画『エクレール~お菓子放浪記』に出演する林隆三が、出演料を全額被災地復興のために寄付したことがわかった。本作を先行上映する予定だった地元劇場は跡形もなく流され、製作に協力した県民の中には、いまだ行方不明となっている人もいるという。
本作は小説家・西村滋の自伝的小説「お菓子放浪記」を原作に、孤児の少年アキオ(吉井一肇)が、お菓子へのあこがれを胸に、第二次世界大戦後の混乱期を生きる姿を描いた作品。東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市をメインロケ地とし、昨年10月から撮影された。本作で、アキオが一時身を寄せる旅一座の座長を演じた林は、幼少期の6年間を仙台で過ごしたこともあって「みやぎ夢大使」に任命されている。ゆえに東北への思いは一層強かったようで、震災発生後、本作の出演料を復興支援のために全額寄付した。
本作の製作にあたっては、宮城県では映画を支えるための「宮城県民の会」が結成され、多くの県民がスタッフへの炊き出しやエキストラといった形で製作に参加。完成した作品は、4月中旬に東北での先行上映がされるはずだった。しかし、その矢先の3月11日に東日本大震災が発生。押し寄せた津波は、メインロケ地となった石巻市を一瞬でのみこみ、その町並すべてを破壊した。先行上映の場となるはずだった、同地の劇場、岡田劇場も跡形もなく流され、エキストラとして出演した市民の中には、いまだに行方がわかっていない人もいる。
こうして先行上映はもちろん、宮城県、岩手県、福島県で公開が見送りとなってしまった本作だが、製作関係者は、戦後の混乱期を舞台に「支え合う人の心のやさしさ」をテーマとしたこの作品を全国に届けることで東北の復興に向けた支援の輪を広げたいと、上映の取り組みやチャリティー活動を始めている。
本作を後援する全日本菓子協会は、被災地へのお菓子を送る支援を開始。まずは株式会社湖池屋からスナック菓子1,350ケース、株式会社エイワからマシュマロが200ケース送られた。この働きは、「宮城県民の会」を通じ、他メーカーからも継続して行われる予定。さらに、東京・神戸・福岡で行う一般試写会の会場では、義援金を寄付するための募金を募るということだ。(編集部・入倉功一)
映画『エクレール~お菓子放浪記』は5月21日よりテアトル新宿で公開 その後全国順次公開予定