白人キャストで「AKIRA」を映画化しようとしているワーナー・ブラザースにジョージ・タケイが「失敗から学べ」と苦言
テレビドラマ「スター・トレック」「HEROES / ヒーローズ」のジョージ・タケイが、アジアの原作を白人で映画化すれば失敗に終わるとコメントした。
ハリウッドが大友克洋原作のマンガ「AKIRA」を映画化するにあたり、最近になってキャストの候補が次々に浮上。鉄男役にはロバート・パティンソン、アンドリュー・ガーフィールド、ジェームズ・マカヴォイなどがウワサされている。また金田役には、ギャレット・ヘドランド、マイケル・ファスベンダー、クリス・パイン、ジャスティン・ティンバーレイク、ホアキン・フェニックスなど、豪華な顔ぶれが候補に挙がっているようだ。しかし、ロバートやアンドリューの顔で鉄男というのもしっくりこない気がするが、アメリカの原作ファンも同じ思いだろうと日系アメリカ人のジョージは語る。
ゴシップのブログサイト、ペレズヒルトン.comのインタビューでジョージは、ワーナー・ブラザーズが映画『AKIRA』の主要キャストにアジア系俳優を探していないことに対し、「それがハリウッドの伝統的なやり方」と驚きはしていないとコメント。ジョージいわく、中国を舞台にした映画でも白人を起用してオスカーを受賞したことには首をかしげざるをえないし、舞台でも「ミス・サイゴン」のトラブルが思い起こされるように、アジア系俳優はエンターテインメント界における自分たちの位置づけを確立しようとずっと闘い続けてきたと言う。
イギリスで大成功したミュージカル「ミス・サイゴン」はブロードウェイで開幕することが決まったとき、白人が目を細く見せ、肌を浅黒くしてユーラシア人やアジア系のキャラクターを演じることで大きな反感を呼び、アジア社会への侮辱であり、アジア系俳優が大役にキャスティングされるチャンスを奪うものであると議論を巻き起こした。
ジョージは、人気がある原作の権利を買い、その内容を変えること自体が無意味だと言い、そんなことをするならば、オリジナル作品を作るべきだと苦言。『AKIRA』を白人キャストにすることは、アジア人の気分を害するだけでなく、ファンの思いを踏みにじる行為だと語る。
同じマイノリティでも、アフリカ系アメリカ人はエンターテインメント界においてはるかに浸透しているとも言う。「金になるアフリカ系アメリカ人スターは誰かと聞かれれば、デンゼル・ワシントンやサミュル・L・ジャクソンなど、いくらでもいる。でも、アジア系アメリカ人でいるかと聞かれれば誰もいないんだ」と残念がった。
ジョージは、ラジー賞5冠を達成したM・ナイト・シャマラン監督の映画『エアベンダー』も原作の人種を無視し、白人で映画化して大失敗したことを指摘。「シャマランの映画が失敗に終わったのを見て、なぜ同じような度重なる失敗から学ぼうとしないのかがわからない」と語り、『AKIRA』も主要キャストを白人化すれば同じ目にあうと映画会社に注意を呼びかけている。果たして彼の声はワーナーブラザースのお偉方の耳に届くだろうか。(澤田理沙)