仏友、みうらじゅん&いとうせいこう 脱力見仏記!千年以上前の仏像に「アバター状態だね」「テクノカットだよ」と突っ込みも
互いを「仏友」として認め合う仏像マニアのみうらじゅんといとうせいこうが、独自の視点で寺を巡り仏像と対峙(たいじ)するテレビ番組「新TV見仏記」の最新DVD「TV見仏記10周年記念 新TV見仏記特製Tシャツ&DVDパック<初回限定版>」が発売されるにあたり、みうら、いとう両氏が互いへの思いを語った。
「TV見仏記」は、CS放送の関西テレビ☆京都チャンネルで2001年に放送を開始した長寿番組。2010年からは関西テレビに移り、「新」の冠をつけていよいよ地上波に進出。その勢いは衰えるどころか、ますますパワーアップしている。そして10周年を迎え、最新作の「京都編」では神護寺、西光寺、長講堂、福田寺、宝福寺を、「奈良・斑鳩編」では興福寺、額安寺、吉田寺、融念寺、中宮寺を訪問。「この2本はかなり印象に残っているんですよね。強烈でした。斑鳩に行って、法隆寺に行かず吉田寺に行っちゃうセレクトがすごいと思いますよ」と言うみうらと、「かなりカルトな茶枳尼(だきに)天とか、龍神といった秘仏もある一方、阿修羅もいる。振り幅の大きさを味わっていただきたいですね」と言ういとうが、上人ブームに舞い上がり、携帯バッグ付き木魚セットに歓喜し、龍神の荒々しい姿に恐れおののき、ミステリアスな地蔵に放心する姿が、余すところなく収められている。
その姿はみうら自身も「何より楽しそう、この2人が! やっぱり自分たちも楽しくないとね」と語るほど。しかし意外にも、番組が10年も続くとは2人とも思っていなかったという。「ありがたいことですよ。『TV見仏記』のころは、僕らずっとすっぴんでやっていましたからね」とみうらが振り返ると、いとうは「よく続けさせてくれるよね。その上、DVDが出るっていうのが不思議。誰が買ってくれるの?」と首をひねりながらも「スタッフも含めて、頑張り過ぎないし、無理もしないけれども、ダレていいかげんにやってもいないから、ちょうどいい具合なのかなと思います。遊び心も入れながら、信仰心のことも考えてやってるから」と今日まで続く理由を分析してみせた。
そうなると、これからも続く番組の展開が気になるところ。いとうが「地上波になったし、僕は九州に行きたいんですよね。宇佐のあたりに」と希望すると、すかさずみうらが「宇佐神宮に行きたいだけじゃん! 神社じゃん! まあ、東大寺と結びついているからいいけど」とマニアックな突っ込み。今度は「鳥取も僕ら行ったことがないので、(島根県の)出雲のあたりもいいですね。何か神像があると思うんだよな」といとうが提案すると、みうらも「三徳山三佛寺の蔵王権現がいいんだよ」と同調し、すんなりOKが出た。
そんな2人が「見仏」のコンビを結成したのは、雑誌で「見仏記」の連載を開始した1992年。実に20年もの付き合いになるが、お互いにどんな存在なのだろうか? 「相棒なんですよね。で……顔も好きです」と語ったのはみうら。イラストレーターらしく「何枚も絵を描くぐらい好きなんだよね、頼まれてもいないのに。やっぱり、絵を描きたくなるやつと旅したいもんね」と笑顔でいとうへの愛を告白。それに対し、「いいかげんにしてください! おかしいでしょ?」と言いながらもうれしそうないとうは、「発想を広げてくれるんですよね。みうらさんはアーティストでありながら、ものすごく優秀な編集者でもあるんですよ。だから、迷っているときなんかは『いとうさん、今年はこっちにいった方が面白いよ』と仕事の方向性を占ってくれるし、『千円札のまとめ方がおかしい』って誰も指摘してくれないことを言ってくれる」とみうらへの信頼ぶりを語った。その言葉から、お互いに全幅の信頼を寄せている様子が伝わってくる2人が、ひたすら仏像を楽しむその絶妙な力の抜け加減、そして、千年以上前の仏像にも「アバター状態だね」「テクノカットだよ」とたちまち現代に根を下ろして語る、この2人でなければ成立しないであろう自由な見仏スタイルを、ぜひ無の境地で楽しんでほしい。(写真・文:小島弥央)
「TV見仏記10周年記念 新TV見仏記特製Tシャツ&DVDパック<初回限定版>」は、5月27日に税込み7,350円で発売(発売元:関西テレビ放送、販売元:TCエンタテインメント)。また、関西テレビ放送で毎週水曜深夜1時58分から再放送中