オリヴァー・ストーン監督、大作『アレキサンダー』当時を振り返る!負けることも勝利の過程
映画『プラトーン』や『ウォール街』などでおなじみのオリヴァー・ストーン監督が、過去に製作した大作『アレキサンダー』について、ニューヨークのリンカーン・センターで行われたイベントで振り返った。
オリヴァー・ストーン監督映画『ウォール・ストリート』場面写真
同作は、紀元前356年、マケドニア王フィリップスとその妻オリンピアスのもとに生まれた息子アレキサンダーの生涯を描いた、制作費に200億円を費やした壮大な歴史スペクタクルだ。権力に執心する母親から野望を注ぎ込まれ、さらに両親の確執に胸を痛めていたアレキサンダーは、父親が何者かに殺されたことで20歳にして王位に就くことになったが、王位に就いてから多くの困難が待ち構えていたのだった。
まず、アレキサンダーを制作しようと思った経緯について「若いころに、作家メアリ・ルノーが執筆した『アレクサンドロスと少年バゴアス』と『ファイヤー・フロム・ヘブン(原題) / Fire From Heaven』を読んでアレキサンダーに興味を持ち、さらにその後ギリシア神話に関するあらゆる書物を読んだんだ。その後、ニューヨーク大学で映画を専攻していたときも、将来アレキサンダーに関して映画を制作したいと思ったが、長編はまず無理だと思っていたから、始めはドキュメンタリー映画を製作しようと考えていたんだよ」と語った。ただ、そのドキュメンタリーさえも企画倒れに終わり、いったん諦めたオリヴァーだったが、映画界での数多くの作品の成功で、晴れてこのアレキサンダーの長編を描くことになったようだ。
この映画は2004年に公開され、上映時間が2時間55分あるのにもかかわらず、海外での配給では成功を収めた。だが、アメリカでの興行がイマイチだったのは何故だったのか。「当時、(アメリカの興行成績に)ものすごく落胆したのを覚えているよ。ただ、目の前に良い例があったんだ。アレキサンダーは決して諦めなかったからね。それに、それまでも僕が手掛けた映画で興行的に失敗した映画はあった。映画『ニクソン』や『天と地』は興行的に成功しなかったんだ。それに、若いころに執筆した脚本の中には制作会社から断られたものもたくさんあったよ。だから長い目で見れば、僕は負けることも勝利の過程だと思っている」とオリヴァーらしい前向きな考え方をしているようだ。
過去に『ニクソン』や『JFK』でディレクターズ・カットを公開しているが、同作もディレクターズ・カットを公開した理由は「この映画は、フランス、イギリス、そしてL.A.で編集されたが、ほとんどのオリジナルネガをこの映画の編集を担当したアレックス・マルケスが、フレームごとに4K解像度でスキャンし、さらに現在の方が公開当時よりよりテクノロジーが進化していて、ビジュアル・エフェクトの面で、新たにデジタルで手を加えているんだ」と明かした。
最後にオリヴァーは紀元前のストーリーではあるが、歴史的背景を曲解せずに描いたつもりだと語っていた。企画から15年経ってようやく制作できた作品であるため、彼なりの思い入れがあるようだ。同作は、コリン・ファレルとアンジェリーナ・ジョリーの演技が魅力の一つになっている。時間のあるときに鑑賞してみてはどうだろうか? (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)