『127時間』のダニー・ボイル監督、ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』のような大作映画はもうコリゴリ?
第83回アカデミー賞をはじめ、各映画賞をにぎわせた映画『127時間』でメガホンを取ったダニー・ボイル監督がインタビューに応え、映画人生を変えることになった決断について語った。
ロッククライミング中の落石事故によって腕を挟まれ、身動きができない状態となった男性、アーロン・ラルストンの実話を基にした本作。アーロンはある究極の決断を下すことで生還を果たすが、ボイル監督は、人生において究極の決断を下したことがまだないといい「例えば子どもを作るときなんて、大きな決断になると思うけど、子どもを作ろうって計画は、決断するものでもないしね」とそっけなく語った。しかし、監督人生においては別のようで「仕事の面で言えば、アメリカに行って、ハリウッド風の作品を撮るのでなく、イギリスで作品を撮り続けることを決めたくらいかな」と明かした。
1996年の『トレインスポッティング』で世界的なブームを巻き起こした後、ボイル監督には、当然ながら、ハリウッド映画界をベースに活動する道もあった。しかし、大規模なスタッフを動員したレオナルド・ディカプリオ主演映画『ザ・ビーチ』の撮影を振り返り、「200人以上のアメリカのクルーを連れてタイに行ったんだ。いろいろな事故も起きて本当に大変で、もう二度とこの手の映画は作らないって決心したよ」と語る監督にとって、イギリスをベースとし、ハリウッド風大作を作らないという決断は正しかったようだ。
また監督は、本作の主演を務め、同じくハリウッドには住まず、ニューヨークをベースに活動するジェームズ・フランコを「すごく頭がいい人だと思う」など絶賛。「彼は、監督の言うことをすごくよく聞く。僕の要求を静かに聞いて、OKって」と役者のエゴに悩まされることもなかったようだ。本作は、第83回アカデミー賞にノミネートされるなど、ジェームズの俳優としての評価を一気に高めた。「どんな役柄を演じていくか、とても悩むときが来るかもしれないけれど、コメディーもシリアスも、どんな役柄もできる可能性を秘めているんだ。あとはその可能性を彼がどのように使っていくかだね」とどこか自分と似た部分を持つジェームズのこれからに期待を込めた。
『ザ・ビーチ』の苦い経験を思い返しながら「あの映画は、大きく人生を変えた」と語るボイル監督。ハリウッドからのラブコールをけった後も、続編も製作される人気となったホラー映画『28日後…』を手掛け、『スラムドッグ$ミリオネア』では第81回アカデミー賞監督賞を獲得。『127時間』でも6部門でアカデミー賞にノミネートされるなど、その決断が間違いではなかったことを証明し続けている。(編集部・入倉功一)
映画『127時間』は6月18日より公開予定