被災地の子どもたちの10年後…「福島出身の子が差別されない世の中に」日本人の遺産とは何か
25日、調布市文化会館たづくりにて浅田次郎原作の映画『日輪の遺産』を題材にした「リアル熟議トークショー」が行われ、監督の佐々部清、映画評論家の寺脇研、そして調布市の長友貴樹市長が登壇。客席には教育関係者が招かれ、熱い議論を繰り広げた。
本編鑑賞後、文部科学省が推し進めている「熟議」を行ったこの日のイベント。席の近い者同士数人のグループでディスカッションが行われ、初対面同士や世代を超えたメンバーながら大いに盛り上がった。中でも20代の青年は、同じグループに戦争体験者がおり「戦争は経験したことはないですが、戦時中のリアルな話や悲惨な話も聞けました」と貴重な経験に感謝していた。
その後はグループごとに登壇者に質問を投げかけ、タイトルの「遺産」をどう意識して撮影したかと聞かれた佐々部監督は、「撮りながら思ったのは国へ思いです。誰もが己のため、個のためではなく、国のために動いているんです。それがひょっとしたら日本人が持っている遺産で、それが伝わるといいと思います」とコメント。
一方、寺脇は本作で描かれる戦時中の日本と現代の日本を合わせて「戦時中日本が神の国と言われていたことと、原発が絶対安全と言われていたことは同じ。(劇中に登場する女学生たちに)逃げ場がなく国に逆らえば非国民と言われたように、福島の子どもたちも同じで、よそに避難すれば白い目でみられるんです」と現状を指摘。「大人になって福島出身の子というだけで差別されて、結婚してもらえないかもしれない。10年後、福島出身の子と結婚できるか? できると言える子どもをつくらないと」と教育関係者を前に被災地の子ども達の10年後に気をはせていた。
映画『日輪の遺産』はベストセラー作家・浅田次郎の原作をもとにした近代史ミステリー。太平洋戦争終結間近の夏、祖国の復興を願いGHQ最高司令官マッカーサーの時価200兆円にも及ぶ財宝を財宝を盗み出した帝国陸軍将校たちと20名の少女たちに待ち受ける壮絶なドラマを描く。(取材・文:中村好伸)
映画『日輪の遺産』は8月27日より全国公開