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女性も夢中になるAVとは?『監督失格』の平野勝之監督、90年代のAVヌーヴェル・ヴァーグ作品を解説!

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ぶっちゃけトークを繰り広げた平野勝之監督と中村うさぎ
ぶっちゃけトークを繰り広げた平野勝之監督と中村うさぎ

 19日、新宿のLEFKADAで映画『監督失格』公開記念トークイベント「AV監督失格! 百花繚乱の90年代 AV黄金期の平野勝之」が行われ、平野勝之監督ほか、作家の中村うさぎ、作家でAVライターの東良美季、劇作家でAV監督のペヤングマキらが、平野監督の11年ぶりの新作『監督失格』の原点とも言える1990年代AVについて濃密なトークを行った。

 1997年の大ヒット作『由美香』や、ベルリン国際映画祭に出品された『白 THE WHITE』など、自転車旅行を題材としたいわゆる「自転車三部作」で、映画監督としての注目度を一気に高めた平野監督。しかし彼の名を伝説的に高めたのは、AVメーカー「V&Rプランニング」で発表した諸作品であることは知る人ぞ知る事実だろう。

 「わたしを女優にしてください」シリーズのカンパニー松尾、「ボディコン労働者階級」などのバクシーシ山下、そして平野監督と、きら星のごとくスター監督を輩出してきたAVメーカー「V&Rプランニング」の1990年代作品群は、フットワーク抜群の小型のカメラでタブーを次々と破っていった、まさにAV界のヌーヴェル・ヴァーグ。VHS時代に発売されたそれらの諸作品は、DVDの発売と共にレンタルビデオ店の棚から姿を消し、時折ネットオークションに登場しはするものの、マニアが高値で落札するなど、今となっては入手困難なレアな作品ばかりだ。

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 この日上映されたのは、驚異的な花火発射シーンのクライマックスが伝説となったV&R初監督作「水戸拷問-大江戸引き回し-」、ボディコンTバック姿の4人の女優を下水道のマンホールに入れるも「便器の中から男女のうめき声がする」という近所の通報と共に警察に囲まれてしまった「ザ・ガマン しごけ!AV女優」、本職の痴漢軍団をサム・ペキンパーの「ワイルドバンチ」風のカット割りで撮影したハードボイルドタッチの痴漢劇「わくわく痴漢講座-痴漢の達人-」など、どれも観る者の心を強烈に揺さぶる作品となっている。

 『監督失格』のプロデューサーを務めた「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督の『ラブ&ポップ』を筆頭に、多くの映像クリエーターに影響を与えてきた1990年代V&R作品だが、東良は「当時のAVが『電波少年』などのテレビ番組に与えた影響はとても大きいと思います。テレビ演出家のテリー伊藤の下にいた(AVメーカー、ソフト・オン・デマンド元社長の)高橋がなりさんが言っていたんですが、当時のテレビのADたちが、平野、山下、松尾らのV&R作品をよく観ていた」と証言。中村を筆頭に、会場に集まった多くの女性たちもこれらの平野作品を「面白いよね~」と食い入るように観ていた。

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 そして最後に上映されたのが、平野監督自ら「『由美香』の原点になった」と語る「21歳-みたされない隙間の時-」。「ザ・ガマン」で組んだAV女優・藤香澄と、平野監督の自宅で普通の恋愛AVを撮ろうと画策するも、酒でベロベロになった藤がいきなり彼氏に電話したり、はさみや小さなカッターナイフなどで手首に自傷行為行ったりと、目の前でどんどん暴走。そんな藤を目の前にしながら、「まだカラミを撮っていないのに」と焦り出す平野監督と、カメラが回っていることで次第に高揚感を覚え、カメラの前の行動がエスカレートしていく女優との奇妙な共犯関係が、観る者をぐいぐいと引き込んでいく作品だ。「相手を追い込むということは、自分を追い込むことなんです」と平野監督がコメントすると、東良も「この作品で平野監督は一つの方法論をつかんだと思います。お仕事モードで来るような女優ではなく、AVを通じて何かをつかみたいという女の子は平野監督に敏感に反応するんですよ。わたしのためにここまで反応してくれる。ここまで追い込んでくれる。そういう意味での関係性は林由美香が最高潮だったんだと思います」と解説。まさに『由美香』、そして新作の『監督失格』の系譜につながる平野演出の萌芽が見えるような特集イベントだった。

 本特集は8月に第2弾を予定。世界でも特異なドキュメンタリスト、平野勝之が「監督失格」に至るまでの道程とはどのようなものなのか。今から期待が膨らむ。(取材・文:壬生智裕)

映画『監督失格』は9月3日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズにて独占先行公開

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