世界初の3Dアート映画!ヴィム・ヴェンダース最新作は天才舞踊家ピナ・バウシュのためのドキュメンタリー
映画『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダースがアート作品では世界初となる3Dに挑んだ映画『pina 3D(原題)』が2012年に3D公開されることが明らかになった。2009年に亡くなった不世出の舞踊家ピナ・バウシュさんへのトリビュートとして製作された本作は見事なパフォーマンスを最新の3Dカメラでとらえたダンス・ドキュメンタリー。今年のベルリン国際映画祭で上映されるやいなや話題となり、早くもヨーロッパ各国では大ヒットを記録している。
本作は、長年ピナ・バウシュさんとのコラボを企画してきたというヴェンダース監督が撮り上げた世界初のアート3D映画。作品が製作段階に入ったばかりの2009年にピナさんが亡くなったため、ヴェンダース監督はピナさんへのトリビュートとして、遺志を引き継いだヴッパタール舞踊団との共同作業という形で本作を完成させた。3D映画とダンスの相性がよいことを見抜いていたヴェンダース監督は、自身、「ひっくり変えるような、椅子から投げ出され、床にたたきつけられるような体験」と評する舞踏家ピナ・バウシュの舞台を臨場感はそのままに映像化することに成功。本作で初めてピナさんの舞台を観るという人に衝撃を与えるだけでなく、3D技術の新たな方向性をも示す作品に仕上げている。
「ピナに関する映画」ではなく、「『ピナのための』映画」だとスクリーン上で強調されている本作は、彼女の死後に撮影されたダンス作品が中心となっているが、ダンサーたちがピナさんについて語るインタビューや1978年のダンス映像などから浮かび上がる一人の天才ダンサー「ピナ・バウシュ」は拭い難い印象を残している。それもすべては、ダンサー一人一人の手の指先やつま先といった細かなところの表現にまで、ピナさんの精神が受け継がれているからこそだろう。
2009年に68歳で亡くなったピナ・バウシュさんは、14歳でバレエを始めて以降、世界中のバレエ団で活躍。演劇的手法を取り入れた独自の舞踊芸術は「タンツ・シアター」とも呼ばれ、世界的評価を確立している。ピナさんはいくつかの映画にも出演しており、晩年のフェデリコ・フェリーニ監督の映画『そして船は行く』での姿や、ペドロ・アルモドバル監督の映画『トーク・トゥ・ハー』の冒頭で彼女が披露したダンスを記憶に留めている映画ファンも多いかもしれない。
念願だったピナさん本人とのコラボレーションは果たせなかったものの、彼女のダンス作品とヴェンダース監督ならではの映像美が合わさった本作は一見の価値あり。今年のベルリン国際映画祭で上映されるやいなや大きな話題を呼び、その後公開されたヨーロッパ各国でもヒットを記録したという本作は、いよいよ来年に日本公開を迎える。3Dで表現される雄大なダンスの魅力は、一度ハマったらなかなか抜け出せない。(編集部・福田麗)
映画『pina 3D(原題)』は2012年3D公開