日本の法律のもとで男性から女性に戸籍変更して男性と正式に入籍!ピュ~ぴる「同じ悩みの人に伝われば」
性同一性障害で、その半生がドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』(松永大司監督)になった現代アーティスト・ピュ~ぴるが7月27日、一般男性と入籍した。ピュ~ぴるは性同一性障害者性別取扱特例法に基づき2008年に戸籍上の性別を男性から女性に変更しており、合法的な結婚となる。このほどインタビューに応じたピュ~ぴるは「日本では法案が2003年に成立し、わたしと同じような悩みを抱えた人も結婚ができるようになったけど、まだまだ普通の人には知られていない。わたしがこうして公表することで、少しでも皆さんに伝わればと思っています」と真摯に語った。
お相手は、6歳年上の一般男性で、映画『ロッキー4/炎の友情』などで知られるスウェーデン俳優ドルフ・ラングレン似の長身のイケメンだ。二人は2007年に知人の誕生パーティーで出会い、互いに一目惚れして交際に発展。彼は同性愛者ではなく、ピュ~ぴるも出会って早々に自分が性同一性障害であることを打ち明けたが、彼は「そんなの関係ない」と変わらずにピュ~ぴるを女性として愛してくれたという。
「交際1か月後に、もともと予定していた性別適合手術のためにタイへ行ったりしたけど、その間もずっと見守っていてくれた。もう4年も同棲していてお互いの良いところ悪い所も知っているベストパートナー。ただ、結婚の話が出たのは7月上旬ごろ。普通の女性よりも多分結婚に対する憧れがあって、いつかは……と思っていたけど、まさかこんな展開になるとは。しかも、5年前に撮影された映画『ピュ~ぴる』のラストシーンでは“彼氏が欲しい“っていうつぶやきで終わっていたのに。人生って分からないものですね」
7月27日を選んだのには、意味がある。ピュ~ぴるの37歳の誕生日で、両親への感謝の気持ちが込められているのだ。もはや名前も肉体も、親から授かったものはすべて自分の意思で変えてしまったが、それでも両親との繋がりを記念日として残しておきたかったという。「両親には2007年1月、自分は小さいころから男性にしか興味が持てない性同一性障害であることも、すでに去勢手術を受けたことも全部打ち明けました。すでにわたしが変わった格好で外出していたので母親はうすうす気付いてはいたと思うけど、直接言われたのがショックだったのか、泣かれてしまったんです。でも父親は『やるなら中途半端なことだけはやめろ』と言ってくれた。以降は、戸籍上の性別を変えるために必要な専門医への通院や、わたしが説明する手間がないように親族や近所にそれとなく話してくれたりと、両親が全面的にバックアップしてくれた。入籍前に父は、彼を実家近くの居酒屋へ連れて行ってくれたんですけど、近所の人に“コレ、ウチの娘の婚約者“って説明してたって(笑)。逆に、彼の家族からは、わたしを受け入れてくれる旨のメールを頂いたんです。うれしかったですね」
今秋にはピュ~ぴるお手製のウエディングドレスを着て、披露宴も行う予定だという。また映画『ピュ~ぴる』はオランダ・ロッテルダム国際映画祭をはじめ各国の映画祭に招待上映されており、続編の撮影もすでに進行中。今月には、彼と共にファッション&雑貨ブランド「DAYS OF PYUUPIRU」を立ち上げてるなど、公私共に絶好調だ。
「でも今まではセクシュアリーな面で見られていたけど今後はそれがなくなるので、アーティストとしての真価が問われるようになる。今後はもっと創作活動に専念しなければ。人生の第二章の始まりです」人として、アーティストとして、どんどん進化していくピュ~ぴるに今後も注目したい。(取材・文:中山治美)
映画『ピュ~ぴる』は、群馬・シネマテークたかさきで8月12日まで公開中。