わいせつ映像をダウンロードし服役していたコメディアンを復帰させたイギリス日系青年の監督デビュー作が大好評
現地時間10月2日、ロンドンで開催中の第19回レインダンス映画祭で、トム・キングズレー&ウィル・シャープ監督映画『ブラック・ポンド(原題)/Black Pond』のワールド・プレミアが開催された。上映後、キャスト、スタッフが質疑応答した。
本作は、犬の散歩中に出会った風変わりな男性を家に招いたことから、騒動に巻き込まれる一家の主を主人公にしたコメディ。散歩コースであり、物語の発端に登場し、後々に意味を持ってくる沼をタイトルにしている。ドライなユーモアで包まれた中に、詩的なものも感じさせる秀作だ。ほぼ満席となった会場からは上映終了後、拍手と歓声があがった。監督は、本作がデビューとなるトム・キングズレーとウィル・シャープ。日英ハーフのシャープは、一家の姉妹2人に同時に恋してしまう日系青年を演じているほか、脚本も書いている。俳優としてはテレビドラマなどでも活躍する25歳だ。
低予算の優れた作品に与えられるベスト・マイクロ・バジェット作品賞にノミネートされている本作、製作過程で苦労も多かったと両監督は語る。「プロダクションから予算5万ポンド(約600万円)と聞いていたのが、結局その半分に削られてしまった」とキングズレー、「4人しかクルーがいないから、俳優がサンドイッチを作ったり、監督が俳優の送迎もしたり、みんなで全部やったよ」とシャープ。内容もオリジナル脚本からの変更を余儀なくされたというが、「そのぶん、芯の部分がとらえられて、オリジナル脚本以上にオリジナル脚本らしいものに仕上がったと思う」と言うのが主人公を演じたクリス・ランガムだ。ランガムはテレビのコメディとドラマでBAFTA受賞もしている俳優でありコメディアンだが、久々の顔見世となる。本人は役のリサーチのためと言う、児童のわいせつ映像をダウンロードしたことで、2007年に有罪判決が下り3か月半服役して以来の登場だ。普通の会話や動きを面白く見せてしまう持ち味を存分に発揮しているランガムほか、上手い役者がそろい、新人監督らしい冒険のある映像を支えている。
『ブラック・ポンド(原題)/Black Pond』はイギリスで11月11日より公開予定。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)