ミシェル・ウィリアムズがマリリン・モンロー役に挑戦した話題の新作がニューヨーク映画祭に登場!-ニューヨーク映画祭
ミシェル・ウィリアムズがマリリン・モンロー役に挑戦した話題の新作『マイ・ウィーク・ウィズ・マリリン(原題) / My Week With Marilyn』が、現在開かれているニューヨーク映画祭(N.Y.F.F 49th)で上映され、女優ミシェル・ウィリアムズ、サイモン・カーティス監督、男優エディ・レッドメインが語った。
ミシェル・ウィリアムズ出演映画『脳内ニューヨーク』写真ギャラリー
同作は、マリリン・モンロー(ミシェル・ウィリアムズ)がロンドンで、ローレンス・オリヴィエの主演/監督作『王子と踊子』に出演していた当時の撮影状況を、アシスタント・ディレクターとして働いていたコリン・クラーク(エディ・レッドメイン)の目で見つめた傑作ドラマ作品。コリン・クラークの同名タイトルの原作を映画化している。
まず、制作経緯についてサイモン・カーティス監督は「幸運にも原作者のコリン・クラークが最初に書いた日記『ザ・プリンス、ザ・ショーガール・アンド・ミー』(日記を集めた単行本)を読んだんだ。(この日記は、後に同名タイトルでドキュメンタリー化されている)それから、5年後にこの映画の原作『マイ・ウィーク・ウィズ・マリリン』を読んだんだ。その時の印象は、映画製作をとてもユニークな観点から見つめていると思った。それからは、脚本家エイドリアン・ホッジスとともに脚本を執筆し、さらにBBCとワインスタイン・カンパニーのもとで制作ができることになったんだ」と明かした。
これまでテレビや映画を通して数多くのマリリン・モンローを描いた作品があるが、リサーチの過程で、ミシェルはマリリンについて新たな発見があったのだろうか。「これまで描かれてきたマリリンの作品は、どの作品も似ている箇所があったわ。きっとまだ描かれていない箇所があるはずと思って、それを起点に彼女をもっと調べようと思ったの」と述べたミシェルだが、実際に行ったリサーチは「彼女の映画を観たり、インタビューを聞いたり、山積みになった(伝記)本を読んだりしていた」と語り、普通の俳優の行うプロセスとたいして変わりがなかったようだが、そのリサーチ過程で大きな発見があったようだ。それは「マリリン・モンローはマリリン・モンローというキャラクターを演じていたの。皆がなじんでいたマリリンの内面には、もう一人の(別の)人が居たのよ。ただマリリンは、(映画内や公共の場では)そのマリリンというキャラクターを徹底して演じきる技巧を、自ら勉強して完璧にしていったの。だから彼女を演じる上では、マリリンとさらにもう一人の彼女を演じるわけで、なかなかマスターできずに、時間の掛かるプロセスになったわ」とこれまでのマリリン役とは違い、複雑なマリリンの心境がミシェルを通して克明に伝わってくる。
エディ・レッドメインは大学で美術史を学んでいたことから、この作品に興味を持ったらしい。「僕がニューヨークの舞台をやっていた際に、この脚本を渡されて、まず興味を持ったのは、この作品の原作者コリン・クラークの父が、ケネス・クラークだったからなんだ。ケネス・クラークは有名な美術史家で、その父親のことを大学の授業で知っていたからなんだ」と原作を読む前にこの作品に惹かれたらしいが、実際に脚本を読んでみると「コリンと僕は不思議なくらい似ているところがあるんだ」と共感の持てるキャラクターだったらしい。その後「僕はオーディションした後、ミシェル・ウィリアムズとともにスクリーンテストをしたんだ。一度出演が決まってからは、本当に夢のようだった。特に共演したイギリスの俳優ではケネス・ブラナーやジュディ・デンチは、僕にとってはアイドル的な存在だからね」と刺激的な環境下で仕事ができたことに満足しているようだ。
この映画ではマリリンが歌っていた曲を、実際にミシェルも歌っている。「マリリンには実際にボーカルの先生が付いていたの。おそらく、プロの(ボイス)トレーナーが付いていることは、当時と今も変わらないのかもしれない。わたしもマリリンと同じように幸運だったのは、デヴィッド・クレーンという素晴らしいトレーニングコーチが付いてくれて、2、3週間掛けて歌い方を教えてくれたの。彼は、わたしは歌手じゃないからと言って、特に(歌っている際の)呼吸の仕方や歌詞を通しての感情の伝え方を教えてくれたわ。そのほかに、マリリンは歌手エラ・フィッツジェラルドに影響を受けたそうで、わたしはエラの曲もよく聴いていたわ」と教えてくれた。
映画は、繊細な精神状態のマリリンと、人々がイメージするセクシーなマリリンという両極端な演技を見事にミシェル・ウィリアムズはこなしている。まだ時期尚早ではあるが、ミシェル・ウィリアムズがアカデミー賞主演女優賞ノミネート候補の可能性が十分あるとみられている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)