大林宣彦監督、ブルーレイが普及しないのは「業界が冒険をしないから」!74歳にしてデジタル化を推進!!
2日、目黒雅叙園でDEGジャパンとBDA共催による「ブルーレイ拡大会議」が行われ、大林宣彦監督がブルーレイについて「DVDは再現のメディアで、ブルーレイは創造のメディアである」と持論を展開した。
この日のテーマは、登場から5年が経過したブルーレイディスクの市場拡大について。ゲストとして参加した大林監督は「わたしは、74歳のフィルムで育った人間なんですが、3年ほど前にブルーレイに出会って、デジタル化を決意した」と切り出し、今夏公開予定の松雪泰子主演の新作『この空の花-長岡花火物語』はデジタルで撮影し、ブルーレイで上映することを明かした。
そして、「2時間40分ほどの大作ですが、フィルムなら20億くらいかかりそうな題材。デジタルなら10分の1くらいの予算でできるのでビックリしている」と切り出した大林監督は、デジタル化によって大幅な人件費削減が実現したことを付け加える。
従来からフィルムに比べビデオの画面は明るいといわれてきたというが、「今度のわたしの映画をご覧になったら、35ミリで撮ったと思うくらいにどっしりとした、重い感じの画面になっていると思う」と自信を見せる大林監督。「むしろデジタルで撮ったからこそ、本来の絵に戻ったと言える。僕が自主制作映画を撮っていたころ、8ミリで(超大作の)『ベン・ハー』を撮ってやる、と言ったことがあるんですが、くしくもブルーレイの登場でそれが可能になった」と満足げな表情だった。
一方で、「ブルーレイが普及しないのは業界が冒険をしないから」と指摘する大林監督は、源氏物語の現代語訳や、音楽のデジタルリマスターのように、過去の遺産を基に、カラー化やワイドスクリーン化など、現在の映画フォーマットに合わせた再創造を提案。「伝統的なものを改めて伝えることも必要。チャップリンの映画なんかは色がついていない、音がないと言って今の若い人は敬遠してしまうけど、ブルーレイなら現代の映画へ再構築できる。たとえば黒澤明の『七人の侍』大林版というものを作らせてくれるなら、ぜひともやらせていただきたい」と業界関係者に提案した。(取材・文:壬生智裕)