ニュージーランド国内興行収入の記録を塗り替えた新作『ボーイ』とは?11歳の少年が主人公!
2010年に公開され、ニュージーランド国内の過去最高興行収入ををたたき出した話題の作品『ボーイ(原題) / Boy』について、タイカ・ワイティティ監督が語った。
同作は、マイケル・ジャクソンが世界を席巻していた1984年のニュージーランドの田舎町ワイハウベイで、マイケルを崇拝していた11歳の少年ボーイ(主人公の名前)は、祖母と弟ロッキー、ヤギのリーフ、さらに数人の従兄弟たちとともにのんびり暮らしていた。だがある日、祖母が葬式の用事で一週間留守にしている間に、全く顔さえ覚えていない父親アラメインが、突如刑務所から友人を連れて戻ってきて、一波乱起こしてしまうというコメディ/ドラマ作品。
この映画はニュージーランドのユニークな社会が描かれているが、制作経緯については「実は2005年に見捨てられた子どもたちを題材にした短編を製作し、その後サンダンス・インスティテュートのライターズ・ラボで長編用の脚本を書いたが、ユタ州の子どもたちではなく、僕が生まれ育ったホームタウン、ワイハウベイに移しかえて撮影することを決めたんだ。撮影は、実際に僕が以前に住んでいた祖母の家で行った。祖母の家で育った環境は、この映画ほどユニークなものではなかったが、町全体が子どもたちによって動かされているような感じで、僕ら子どもたちは自由にこの田舎町を探索していたんだ」と当時を振り返った。
マイケル・ジャクソンの影響について「当時は、インターネットや携帯もなかった時代で、本当に限られたテレビの世界だけのつながりでしか、物事を知ることができなかったが、僕らの町の子どもたちはみんなマイケル・ジャクソンが好きだったんだ。もっとも、当時の僕らはあのマイケル・ジャクソンもボブ・マーリーも、僕らの町のスターで、僕らの家の近くに住んでいると思っていたけれどね!(笑)」。映画内では、そんな田舎町の世界観がほのぼのとさせてくれる。
この映画は、ニュージーランド国内で過去最高の興行収入を稼いだが、何が観客に受け入れられたのだろうか。「まず、僕らニュージーランド人を描いた作品で、泣いたり、落ち込むことなしに観られるコメディ作品だったからだと思う。ニュージーランドの映画の多くはダークな題材を扱った映画が多く、特にマオリ語(ニュージーランドに住んでいるマオリ族の言語)を使った映画には、そういうダークな作品がすごく多い。だから、みんなが笑えるニュージーランドを描いた作品で、さらに子どもの扱い方を問題提起した映画ではなかったことが良かったと思っているんだよ」と満足そうに答えた。
最後にタイカ・ワイティティ監督は、この映画に出演した子どもたちは、すべてが現地の子どもたちで、一度も俳優経験のない子たちばかりだったということ、実際に主役ボーイを演じたジェームズ・ロールストンは、撮影3日前にキャスティングされたことを語った。映画は、地球の反対側では、こんな作品が作られているんだと、ホッとさせてくれる映画に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)