映画字幕は日本語が勝負!戸田奈津子、菊地浩司ら映画翻訳家協会主催のシンポジウム開催
映画翻訳家協会が主催したシンポジウム「みんなで話そう、映画字幕のこと」がオーディトリウム渋谷にて開催され、戸田奈津子、菊地浩司、そして最長老の山崎剛太郎といった翻訳者たちが公の前で初めて一堂に会した。
このシンポジウムは「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」の出版記念として、2部構成で約2時間半にわたって行われた。翻訳者たちは、「英語ができることは出発点にすぎず、日本語力が勝負」「料理人に例えれば、語学力は包丁であって常に研ぐことが大事」「脚本家と監督が売りにしているのはどこかに着目して、正しく良い字幕で内容を伝えることが大事」といった持論を述べた。
文字数制限があるため情報を取捨選択し日本語にしていかなければならないのに、洋画を製作した本国のチェッカー(字幕をチェックする人)は基本的に「情報が10あればそのすべてを字幕に反映させるべき」という考えを持っているため、困難な局面も多々あるという。また、第一線で活躍する翻訳者ならではの業も語られた。
第2部では、映画配給会社の制作担当であるワーナー・ブラザース映画の松崎忍氏、ギャガ株式会社の宮本美雪氏がゲストとして登壇。翻訳者と共に映画や字幕にまつわる興味深い話の数々を繰り広げ、満場の客席は静かに耳を傾けていた。
映画翻訳家協会は、故・清水俊二を代表として1983年に12名で設立(2012年現在20名)。会員同士の交流、映画配給会社と契約交渉を行う労組的な側面もある。なお、翻訳者それぞれがフリーランスの立場で仕事を請け負うため「協会が受注して翻訳者に振り分けているのでは」という一部で流布する誤った認識を訂正し、協会員は同志であるとともにライバルであるという実態を明かす場面もあった。(取材・文・写真:南樹里)