キム・ギドク監督、日本での撮影許可に閉口…日本ロケを断念したことを明かす
韓国のキム・ギドク監督が撮影中の新作『ピエタ』が当初、日本で撮影予定だったことが分かった。開催中の第7回大阪アジアン映画祭に初監督作『ホーム・スィート・ホーム』で参加している、ギドク監督の元助監督ムン・シヒョンが明かしたもの。
『ピエタ』は、オダギリジョー主演『悲夢(ヒム)』(2008年製作)以降、隠遁生活を送っていたギドク監督が、4年ぶりに挑む本格劇映画。金融会社の依頼を受けて借金回収を行っている孤独な男(イ・ジョンジン)が主人公で、その男のもとにある日、母と名乗る女性(チョ・ミンス)が現れる。ピエタは、イエスの遺体を抱いて悲しむマリア像を意味するだけに、ギドク作品らしい衝撃的なドラマが期待出来そうだ。すでに2月中旬から韓国で撮影を行なっている。
シヒョン監督は12日、大阪・韓国文化院で行われた「韓日インディペンデント映画制作フォーラム」に参加。同映画祭では今年、韓国映画新興委員会が設けたロケ地誘致サポート制度の第1弾作『道~白磁の人~』(高橋伴明監督)や、韓国映画『息もできない』でブレイクした女優キム・コッビ主演の日本映画『蒼白者』(常本琢招監督)が上映されるなど、アジアのボーダレス化が顕著なことから韓日合作の可能性について話し合われた。
しかし、大阪で短編『ワンテンポ』を撮影した全リンダ監督が「道路使用許可を取るために何度も何度も書類を書かなければならなず、それだけで時間が取られた」と嘆くと、続いてシヒョン監督が「キム・ギドク監督の新作も、日本は撮影しにくいという話になった」と日本ロケを断念したことが明かされた。海外で人気のギドク作の舞台となれば、日本を世界にアピール出来る絶好のチャンスだっただけに残念だ。
またコッビは、韓日の映画作り違いについて問われると「韓国ではどんな低予算映画でも役者同士2~3か月かけてコミュニケーションをとるなど事前の準備に時間をかけるが、日本は違うので戸惑った。今回は共演者と数日前に会ってすぐに撮影だったので、私からお願いし、一緒にお酒を呑む時間を設けてもらいました」と日本の映画関係者には耳の痛い話も飛び出した。
韓国では自主映画でも政府や企業の制作支援が豊富にあるなど映画産業が発達しているだけに、今後も学ぶべきことは多々ありそうだ。
キム・コッビ主演『蒼白者』は3月18日、大阪・中崎町のプラネット・スタジオ・プラス・ワンで上映される。(取材・文:中山治美)